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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む「俺も」
それだけ言うとはにかんだように笑い、まだ追い付いていない植野を待つことなく再び歩き出した。
『……末期の上位互換ってなんだろ』
はね上がる心拍を落ち着かせる為両手で顔を隠し1つ深呼吸をすると鈴橋めがけ走り寄り隣に並び立った。自分を見上げ一瞬の笑みを浮かべると、何事もなかったかのように再び前を見据える。
『最近、良く笑うな……』
1つ、訂正。
鈴橋が何かを変えようとするその時は
“自分が喜ぶかもしれない”が
理由だったりすると思ったけれど…
それだけじゃなかった。
その中には鈴橋の “ したい ” もちゃんとあって
時々に感じる2人の間の温度差に不安になる時もあるけれど
鈴橋も同じように、もしかしたらそれ以上に、自分を求めてくれているのかもしれない。
『いや、だってねぇ。まさかがっくんがこんな公共の場であんな事するなんて思わなかったし…我慢出来なかったなんてもう…そんなん可愛すぎるでしょ』
瞬時に思い出される先程の光景を盛大な咳払いで頭から追い出すと、心配そうに覗き込んでくる鈴橋に手を振り曖昧に笑って誤魔化した。
『とはいえ良く我慢したよなぁ、俺。…まぁ、ゲームのおかげが大きいけど』
あの時タイミング良くGAMEOVERにならなかったらどうなっていたかは正直分からない。コンテニューしないと決めるのは断腸の思いだったし、今後もしまた同じような事があったその時にはちゃんと我慢できる自信はない。
まったくもってとんだ小悪魔ちゃんである。
『…ってか、がっくんって意外とキス魔だよね。全っ然大歓迎だけど。むしろありがとうございますまであるけどっ!』
誘惑に負けず歯止めを効かすべを、コートに頼る事がないような強靭な精神力をどうにか習得しなければと思いつつ、それさえ出来れば今日みたいな事も全然ありだという事で。それが分かったのは嬉しい収穫だったりする。
あそこが誰にも邪魔されない場所であったなら…
考えてもどうしようもない事ではあるけれど、思わずには居られない。
『ま、楽しみは取っておく程良いって言うしね』
いまだ微かに燻る自分半身にそう言い聞かせながら、いつかくるその日を、いつかっていつだろう…と考えつつも大人しく帰路についた。
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