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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む「…帰るか」
「そだね」
最後に軽く触れるだけのキスを交わし筐体から足を踏み出す。
『冬で良かった…コート、長めで良かった。ありがとう、コート。ありがとう、winter』
予想外すぎた鈴橋の行動に少し行きすぎてしまった自身の行動で引き起こされた後遺症。
優しく覆い隠してくれている暖かいコートと季節にまでも感謝を示しつつ2人並んでデパートを出ると、ツンと冷えた風とふわふわと舞い落ちる雪が急激に火照りを冷やし心身共に冷静さが戻ってくる。
「…あのさ、がっくん」
「ん?」
「名前、ありがとう」
「あぁ」
「一緒に居ると楽しいって言ってくれてありがとう」
「あぁ」
「誘ってくれて、ありがとう」
「……別に」
「一緒に居たいって、大事にしたいって言ってくれー」
「分かったっ。 分かったから、もう良いよ…」
『あぁ、好きって言いたいなぁ』
けれどこんな人通りの多い所で白昼堂々言っては怒らせてしまうだけだろう。
ポケットから携帯を取り出しいつかの鈴橋の様に手早く文章を打ち込むと送信ボタンをタップする。直ぐ隣から通知オンが鳴るが気づいてないのか無視しているのか、見ようとしない鈴橋に声をかけた。
「良いよ、後でで」
「いっ、今っ!今見て今っ!!」
『今言いたいのっ!!』
面倒くさそうな表情を全面に出しながらも言われた通りに携帯を取り出した鈴橋はその差出人を見ると植野を見上げた。再び携帯に目を落とし内容を読むと、なにも言わない変わりに大きく溜め息をつき携帯をし舞い込んだ。
『えっ、無視っ!?』
鈴橋らしいと言えばそうなのだけれど先程の熱を帯びた姿との落差があまりにも激しく思わず足が止まってしまう。動くことが出来ないままそんな植野のことなど等気にも止めずスタスタと歩き去る鈴橋の後ろ姿を呆然と見つめた。
『気にさわるような事は言ってない筈、だよね?むしろちょっと喜んでくれるかなぁとか思っちゃってたんだけど…だめ、だったかぁ』
戸惑いと悲しみに沈んで居ると数メートル先で立ち止まった鈴橋が半分だけ振り返り無表情で首をかしげる。落ち込んでいてもしょうがない。待たせては申し訳ないと慌てて足を進めたその時。
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