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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む呆れふんだんに言い放ち隠すことない鈴橋の溜め息に、やはりこれは別の物にするのが妥当な気がした。
『まだ買ってなくて良かった…でも別のかぁ…』
グレードを下げるか、はたまた全くの別の物にするか…取りあえずあちこち回ってみないと。そうなるとあまりゆっくりとはしていられない。
「綾ありがとう! もうちょっと探して見るから、取りあえずこれ、一旦かえ」
「さなくていい」
「えっ?」
立ち上がりながら植野から渡された代金を返そうと差し出した安積の手を、鈴橋がすかさず塞き止め押し返した。
「それ、俺たち2人からって事で」
「…え?」
「それなら、許容範囲だろ」
「や、でも…」
「祝う権利は誰にでもあるはずだろ」
「それは、そうだけど…」
「それに、御礼もしたいと思ってたし。色々と」
『色々って…』
市ノ瀬も植野もなんだか似たような事を言っていた気がする。こんなにも人から感謝されているなんてと改めて班乃の人柄の良さを感じさせた。
押し返され宙に浮いたままの手を握りしめ暫し思考する。渡すものを決めたのは自分だけれども、植野の言う通りこれは班乃への2人の感謝の気持ちだ。自分が断るのは筋違いで、失礼な事なのかもしれない。
それに4人で出しあって買ったものならば班乃だって受け取りやすいだろうし、なにより一番良いと思った物を送ることが出来る。
2人からの思いをぎゅっと握りしめ、深々と頭を下げた。
「ほんとにありがとう2人ともっ!ちゃんとありがとって言ってたって伝えるからっ!じゃぁ、俺行ってくるっ!!」
「いってらっしゃーい!」
元気良く手を振り合う2人を無言で眺める鈴橋の顔には、珍しく微かな笑みが浮かんでいる。
「あっきー喜んでくれるといいねぇ」
「そうだな」
「あっ、やばっ、さっきベル鳴ってたんだったっ!取ってくる!」
慌ただしく受取に向かう植野を他所に鈴橋はマイペースに自分のご飯へと手を伸ばす。折角だしと植野の頼んだものが出来るまで待っていたのだが、もう食べ初めても良いだろう。
『ざる蕎麦にして良かった』
思いの外長く話してしまっていた事にそんな感想を抱きながら1口目をすすった。初めて利用した店だったのだが、これはー…
「待たせてごめん!天麩羅冷えちゃったでしょ」
「別に大丈夫」
「 どう? お蕎麦おいしーい?」
「…可もなく不可もなく、だな」
「それは残念w」
お腹空いたーと誰ともなく口にしながら割り箸を割り綺麗に豪快に食べ進めていく植野の様子を捉えながら鈴橋も食事を進めていく。
「俺はー」
「ぅん?」
「お前と付き合えて良かったって思ってるよ」
「えっ!? 俺もっ!!」
「そう」
「だけど、どうしたの突然??」
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