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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む「明日、パーティーはするの?」
「…ちょっと悩んでるけど多分盛大にはしないかなぁ。誕生日言わなかったって事はお祝いされるの嫌なのかもしれないし…こじんまりやろうかと」
「こじんまりってw」
安積が班乃にあった出来事を知らないなんて事はないだろう。事情を知った上で安積が考えた事ならばそれがきっと正解な気がする。
祝う事すら躊躇われる状況でそれが出来るのは、2人が培ってきた関係があるからこそで…
ただこの優しさに、安積への未練を断ち切る事の難しさが増してしまうかもしれないという懸念はある…
でもきっとあの時の、あれからの彼を見ればもう間違いを起こすことはないだろうと思えた。
大したことは出来ないかもしれないけれど、辛くなったその時の捌け口くらいには思ってくれてると思うし、手を貸すことは出来なくても耳を貸すことくらいは出来るはずだ。
多分…
財布からお札を取り出すと、折り畳むようにして手の中に収め安積へと差し出した。
「ありがとう綾。ちゃんと皆からって伝えるかr」
「うん、よろしくねー!」
「無理っ!これは無理っ!!」
「えぇっ!?」
受け取った金額を目にした瞬間、安積は秒の速度で引っ込めきっていなかった植野の手を両手で挟んで突き返した。
「こんな受け取れないって普通っ!?」
「いや、でも3人で割ったらこれくらいでしょ?」
「なんで値段知ってるのっ!?」
「前に欲しいなぁって思ってたやつだったから」
「やだ偶然っ!? いや、でもこれに決めたの俺だしっ」
「価格も知ってる上で仲間に入れてって言ったのは俺だよ?それにこれはせーちゃんにと言うより、明に送りたいって気持ちだから!」
「そっ、そうかも知れないけど……」
「……金の貸し借りは良くないと思うぞ?」
「がっくんおかえりっ!」
「…ただいま」
美味しそうな匂いを振り撒くおぼんを机に置いた鈴橋は席につくと怪訝そうな表情を2人へと向けた。金銭の貸し借りも勿論だが、その視線は握られている植野の手に向けられている。
「貸し借りじゃなくてあっきーのプレゼント代だよ!むっちゃんとせーちゃん2人からってのに俺も混ぜて3人からにしてーって言ったら受け取れないよー、でこの状態」
「だって…これ」
「……お前、一体いくらの渡すつもりなんだよ」
植野が渡したであろう金額を目にした鈴橋は、ドン引きしたような表情で安積を見やった。友達にあげるとして、割り勘するにして、この金額はとち狂ってるとしか思えない。
「だって…これが良いなぁって、思っちゃったんだもん」
「だもんじゃねぇよ…」
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