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慰弦

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- 26章 -

- 貴方に送る祝福と -

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「良かったねぇ、無事買えて」

「本当にな。まさか1週間前に変わるとは思わなかったから…だいぶ焦った」


学校から少し離れたショッピングモールにて並んで歩いている植野と鈴橋の手には鈴橋妹へのクリスマスと誕生日のプレゼントが下げられ、その顔には安堵の表情が浮かんでいた。

妹が嬉々として見せてくれたサンタさん宛の手紙の中には以前欲しいと言っていた物とは違う物が書かれており、植野の力も借り慌てて玩具屋を巡り歩いた末、なんとかギリギリになって手に入れることが出来たのだった。


「時間取らせて悪かったな。助かったよ本当。ありがとう」

「全然っ!! がっくんと紗千ちゃんの喜ぶ顔が見れるならどうってことないよっ!それにがっくんとお出かけ出来るのすっごく嬉しいし、むしろ役得っ!俺こそありがとうって感じっ!」

「…大袈裟だな」


妹の送り迎えやらなんやらで中々一緒に出かける事が出来ない中のこのアクシデントは寧ろ感謝するところであり、更には自宅でクリスマスらしい事などしないであろう植野にとってこんな形でも参加出来るのは少し嬉しくもあった。自分からなにかするにしても今更母親にプレゼントなど気恥ずかしいし、きっと今年もなにもしないだろう。


「そうだっ!折角だしどっかでお昼食べてかない?がっくんお昼1人でしょ?」

「そうだな。フードコートでも寄ってくか」

「やったっ!なに食べよっかなぁー!!」


当初の目的であるプレゼント探しが無事にはたされたのち植野からの誘いを了承したという事は、ここからの時間は妹ではなく自分の為に使うと鈴橋が選んでくれたと言うことで。

それが嬉しくないわけがない。

心踊らせながら何を食べるか迷う体を装い一緒に居られる時間を引きのばしていく。こうしてどれにしようかと話しながら歩く時間でさえも幸せすぎて終わらないで欲しいと思ってしまう。

しかし人混みがあまり好きではない鈴橋をいつまでも付き合わせるのは申し訳ない。フードコート内を2往復するに止め、其々が出来上がりを知らせるベルを受け取ると開いている席を探す。


「あ。綾雪たかゆき、あれ…」

「……えっ? 」

「だから、あれ」

「やっ、今なんてー」

「あれ、あそこに居るのって」

「いやいや、まってまってっ!?」

「あのヒヨコカラー、安積じゃないか?」

「えっ、せーちゃん??  っじゃなくってっ!!」

「珍しいな、1人なの。行ってみるか」

「いやっ、えっ!? ちょっとがっくん!?」


『まって、どーゆーことっ!?』

秋山のおかげで定着しつつあるヒヨコカラーの頭が、1人ご飯を食べながら携帯とにらめっこしてるテーブルへと進んでいく鈴橋を困惑しながらも追いかけていく。
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