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- 26章 -
- 幸せの相違 -
しおりを挟む話しかけた時にあった不自然な間はそう言うことだったのかとようやく合点がいった。確かに予定にない事だったし、子供と違って色々と準備も必要なのだろう。
異母兄弟と言っても正確にはすでに兄弟ではないこんな子供の自分に対してまでも、御座なりに済ませようとしないでくれるのはなんだか少し嬉しい。
それはそうなのだけれど…
「どうしよう…俺なんか失礼なこと言わなかったかな…」
「大丈夫でしょ!」
「楽天的なのは良いけど、こういう所はもうちょっとちゃんとした方が良いと思う…」
「えぇー…だって今日は待ってくれないんだものー」
「意味分かんないっ、ようでなんとなく分かるのが腹立たしいなっ!?」
そうこう話しているうちにマンションまでたどり着き、徐行運転のおかげでブレーキ付加もかからず停車する。
なんかもう予想だにしない事の連続で疲れた。色々考えたいこともあるけれど今の疲れ果てた頭ではろくに思考を巡らす事など出来なさそうだし、むしろそれ以前に風呂に入って布団へ行ったら秒で寝てしまいそうだ。
とは言え、班乃の誕生日が明後日に控えている。明日中にはちゃんと決めて準備しないと…
「送ってくれてありがとう。じゃぁ、聖もゆっくり休んでー」
「あのさ、聖」
「なに?」
帰ろうとドアノブにかけた手に兄の手が覆い被さる。なにか話したそうな様子に浮かした腰を下ろし、半ドアになったドアを閉め直した。
「ちょっと気になったんだけど」
「うん?」
「さっき、家族として居られた時間は短かったって言ってたけどさ」
「……うん」
「聖はもう俺とは家族じゃないって思ってるってこと?」
突然の言葉に顔が凍り付くのを感じる。
何故そんなことを?
いや、違う。これは、自分のせいだ。
家族じゃないなんてー…
そんなわけない。
そんなことあるはずがない。
そんなこと、微塵も思っていないっ!
「そんなわけないじゃんっ!!そうじゃなくてっ、なんて言うのかな…気持ち的には家族だって思ってるけど、正式には違うって言うか…」
そんなふうに捉えさせてしまっていたなんて考えても居なかった…そんな悲しい質問させる為に言った言葉ではなかった。
と思ったのだが、悲しい顔と言うよりもなんだか困惑しているような顔をしている。ハンドルに両手をかけしばらく言葉を探すような沈黙が流れた後、漸く絞り出すように言葉を発した。
「…えーとさ、聖は戸籍謄本見て俺の事知ったって言ってたよね?」
「うん」
「「………」」
「その……多分、勘違い、というか、知らないだけかも知れないけど」
「うん」
「聖の両親は、今だって俺の正式な親でもあるんだよ?」
「…………え?」
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