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- 26章 -
- 幸せの相違 -
しおりを挟む「楽しかったーはしゃぎ疲れたー」
「それは良かった!」
『雪遊びって意外と体力使うんだなぁ』
楽しかったのは本当だけれど知らない人達の中に居るのはやはり気を使うもので、喧騒から離れ兄と2人きりになるとどっと疲れが押し寄せてきた。
『明日、遅刻しないようにしないと』
今日だけではなく昨日も含め本当に濃い2日間だった。この間の二の舞にならないようにと考えつつ、落ちかけた瞼に抗うことなく静かに目を閉じ怒涛の1日を振り返る。
「…変わってる人達だったけど、皆良い人達だったなぁ。初めましてなのに昔からの友達かってくらい気さくに話しかけてくれるし、皆めっちゃ笑顔だし、なんか、本当に会社の仲間とか会社が好きなんだなぁって感じだね」
「そう見えた?そう言ってくれると俺も嬉しいなぁ!」
思いがけない弟の言葉に月影の広角がふわりと上がった。“変わっている事”の生きづらさは身を持って知っており、軽蔑や差別、時には虐めだってある。そのせいで自分を閉じ込めたり受け入れられない苦しさは計り知れないものだ。
そんな人達が自分らしさを失わず、作品が認められる事で“変わっている事”を肯定され笑顔で過ごせる場所が作りたい。それが会社を立ち上げた大きな理由の内の1つでもあった。
デザイナーとしての仕事も経営者としての仕事もまったくの0スタートだったので苦労はしたけれど、第三者から見てそう見えてくれたのなら、これ以上に嬉しいものはない。
「どれが1番かって聞かれた時は驚いたけど…っていうか、男気じゃんけんみたいなものって言ってたけど、あれなんだったの?」
「あぁ、あれ? 皆の明日のおやつをかけた戦いだよ」
「……おやつ?」
「そう、明日のおやつは彼のおごり!」
「えっ、なんか…悪いことしちゃったかな?」
「良いの良いの!それ含めて楽しんでるんだから!」
「それなら、良いんだけど…」
兄から語られた真実に容赦なさそうな人達ばかりなのでとてつもない高価なおやつを買わされてしまうのではないかと心配になってしまう安積だったが…
『…だって1番好みだったのは本当だし…しょうがない、よね』
本人も楽しんでるのならそれはそれで良いかと無理やり納得させた。
「あ、あと最後に片付けしてくれてた人さ。雪遊びしてた時には居なかったしご飯中もどこに居たのか分からなかったけど…でも最後にちょっとだけでも話せて良かった!」
「……まぁ、人見知りだからね」
『というか、居なかったし…実際』
どこに居たのか分からなくて当然だ。彼女は弟と会うのを避けており、自分達がガレージから抜け出す時に社内に居た彼女へ連絡を入れ漸く顔を出したのだから。
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