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- 25章 -
- 幸せの相違 -
しおりを挟む『…もしかして聖、あの日の事、覚えてないのかな?』
あまりにも楽しそうな兄の表情にそんな疑惑が持ち上がった。しかし自分でさえも覚えているくらいなのだから、兄が思えていないなんて事はないだろう。
自分より経験のある大人だ。忘れているのではなく沢山悩み答えを導き出し、すでに乗り越えているという可能性の方が高いだろう。
それならばそれはどうやって?
兄の嫌いを好きになる方法はなんだったのだろう?
聞いてみたいけれどそれは嫌な記憶を思い出させてしまう事になるのは間違いなく、簡単に問うなど出来そうもなかった。
雪に手を滑らせ真剣に凹凸を削る楽しそうな姿からは当時の兄の面影など感じられない。あの時は幼い自分に合わせて遊んでくれていたし、いつ帰ってくるかも分からない母に対する怯えや自分の身に降りかかるであろう事に心から楽しむ事が出来なかったからなのかもしれない。
申し訳なさで叫び出したくなるくらい心が痛む。けれど自分の事はどうでも良い。兄が今楽しく過ごせて居るのなら、それ以上良いことはないのだから。
暖をとりながらぼんやりと眺めていると、不意に顔を上げた月影と目が合い直ぐ様向けられた笑顔に笑い返す。
かまくらから出てずっと折り曲げていた腰を伸ばした月影は出来栄えに満足したようにひと撫ですると安積の隣に移動し同じ様にしゃがみ込んだ。
「俺も貰っていい?」
「もちろん!」
「ありがとう」
はちみつ柚子を注いで手渡すと冷えた両手を暖めるかのように両手で包み、ちびちびと飲みながら体を暖めていく。
「完成?」
「九割がたね」
「まだなにかやるの?」
「もうちょっと固まったら窓作る予定っ!」
「住み着く気かよw」
「それは遠慮しようかなっw」
軽い冗談を飛ばし合いながら、かまくらや見事に色が付けられて行く雪像を一緒に眺める。
「…皆、本当に楽しそうだね」
「でしょ! 本っ当明るい人達ばっかりなの! こんなに降るなんて思ってなかったからなんも準備してなかったけど、こんなん目にしたらさ、もう遊ぶしかないじゃない?そっこー色々準備したよねっ!」
『でしょうね』
目に浮かぶ、は間違ってはいなかったようだ。しかし輝かしい笑顔で笑うその割には、あまり参加してないように思えた。先ほども遠目から見ているだけだったし…
「でも、その割にはあんまり参加してないよね?」
「まぁ、それはね、しょうがないよね」
「なんで?」
「万が一全員体調崩したら仕事にならなくなるからね。調整して1日2日くらいは俺1人でも大丈夫なようにしてあるの。だから俺は控えめday」
「……ちゃんと考えてたんだ」
「もっと誉めても良いんだよ?」
「エライエラーイ」
「…おかしいな? 感情まで凍えちゃった?」
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