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- 25章 -
- 幸せの相違 -
しおりを挟む「今度は人質にするつもりですかっ!?」
「思い止まってください社長っ!!」
「違う違うっ、良く見て皆っ!人質でもないし拐ったんでもないのっ!」
「じゃぁ誰なんですかその子はっ!!」
「見たら分かるでしょ!弟だよっ!!俺のっ!」
「「「……えっ!?」」」」
騒がしく開らかれていた口は瞬で閉じられ、口をパクつかせながら2人の顔を交互に見る大人達。このタイミングを逃したら彼らの永遠と続きそうな言葉のラリーを止めることは出来なさそうだと、安積は思いきって口を開いた。
「えっとっ!…こんばんはっ!弟の、聖ですっ。そのっ…初めましてっ!」
「ぇ…えっ?えぇっ!?本当にっ!?」
「…はい」
「ねっ、だから言ったでしょ?拐ったんじゃないんだってば」
「いやだって…高校生って言ってませんでしたっ!?」
「そうだよ?」
「えっ、本当にっ!?」
「………本当です」
「うっそ!中学生かと思ったっ!!」
「…………」
結月といいこの人達といい、地味に傷つく。確かに小柄な方と言えばそうだけれど、流石に中学生はない…
が、楯突く勇気はなく愛想笑いでなんとか受け流した。しかし何故兄はいきなりこんな所に連れてきたのだろうか。
「でもこの子が噂の弟君か!会いたかったよっ!」
「噂ですか?」
「社長がいっつもべた褒めしてるからねぇ!」
「べた褒め…」
「そうっ!本当溺愛っぷり半端ないよねっ!」
「止めてよ照れるー!でも可愛いでしょっ!?」
「そうですね!社長と違って純朴そうっ!」
「素直さなら負けてないと思うっ!」
「「「確かにっ!」」」
出会い頭からのあまりの勢いに飲まれてしまっては居たけれど、なんとなくだがようやく会話が成り立つと少しだけ安心感が生まれた。落ちついて見てみればなんだかんだ皆笑顔で冗談を飛ばしあい楽しそうにしているし、怖い人達ではなのかもしれない。
「でも社長。こんな可愛い子連れてきて大丈夫なんですか?」
「え?……ぁ、あー…」
自分に向けられる視線の色が一気に変わり、その様子に先ほどとは違う恐怖が過る。なんだかクセが強い人が多そうだし、今度はなにがあると言うのだろうか…
「ねぇ、聖…俺、居たらなにかまずいの?」
「まずい、っていうか…」
「お待たせーー!!持ってきたよっ、食紅!!」
自分が居るとなにか都合が悪いのだろうか?そんな不安に返答が返される前に一際元気な声が轟いた。その声に一斉に自分を隠すようにした大人達の背が周りを取り囲んだ。
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