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慰弦

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- 25章 -

- 幸せの相違 -

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興味と関わりたくない気持ちが競った場所。

それは穴の掘られたどでかい雪山や大小の雪像がズラリと並ぶ場所に集団で集まる大人達が居る光景。

その光景を背景に走りよってきたシャベルを握った大人達が口々に言い寄って来たかと思うと、月影の後ろに隠れた安積に気がつき声を止め一斉に視線を向けた。

『えっ、怖っ』

そのあまりの圧に忍び足で兄へと近づき手を伸ばすと、背中部分の服をきゅっと握った。

怯える弟とその仕草の可愛さに密かに悶える兄。

そんな異母兄弟達を正しく取り囲むように集まった一行は興味津々で眺めていたかと思うと、そのなかの1人が安積の肩を両手で掴んだ。


「ちょちょっ、ちょっと社長っ!?一体どこの子拐って来たんですかっ!?」

「や、どこの子もなにも、この子は俺n」

「駄目ですよっ!!犬猫じゃねぇんですからっ!」

「犯罪です犯罪っ!!駄目絶対!!ねぇ君どこの子!?ちゃんとお家まで帰してあげるから、どうか通報だけはっ!!」

「えっ!?やっ、通報はー」

「ちょっと君達っ!いくらなんでもそんな事するわけないでしょ!一体俺をなんだと思ってるのっ!?」

「奇人変人っ!!」

「やだっ、ありがとうつ!」

「でもまさか犯罪にまで手を染めるなんてっ!」

「違うってっ!俺を信じてっ!!?」


『なにこれなにこの人達怖いっ!!』

会社の仲間とは言っていたけれど、こうも知らない大人達に勢い良く囲まれやんやと言われると流石に恐怖を覚える。

兄の言葉も自分の言葉も届かないようで、掴まれた肩も振りほどく事が出来ず固まるしかない。


「ちょっと皆落ち着いてっ、怖がってるでしょっ!」

「怖がらせたのは拐ってきたしゃちょーでしょ!?」

「間違いを正そうとするこんな優しい部下達捕まえてそんな事言うなんて酷いですよっ!」

「君達の方が酷いこと言ってると思うんだけど俺だけかなっ!?」

「「「違うと思ってるんですかっ!?」」」

「社長への信頼ゼロすぎないっっ!?」


攻めよせる部下達の言葉をいなしながらその手から掴まれた安積を引き寄せた月影は、背後から抱きしめるようにして弟と顔を並べた。
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