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- 25章 -
- 幸せの相違 -
しおりを挟む「寒……」
バスを降り歩き慣れた道を歩く。家前で遊ぶ子供を横目に素通りし、視界に入った並んで置かれている雪だるまや雪うさぎに苦虫を噛み潰したような気持ちになる。
雪うさぎの目に埋められている真っ赤な南天の実が嫌な記憶を甦らせた。
雪うさぎも雪だるまも、あの時一緒に作ったもの達ばかりだ。
市ノ瀬が隣に居ないだけで驚く程に気分が急降下し、嫌いを受け入れるのはまだまだ難しそうだと溜め息をつく。
なるべく視界に入れないようにしつつ帰宅しリビングへと入ったのにも関わらず、いの一番目に飛び込んできたのは閉め忘れていたカーテンの向こう、窓を開けたら雪崩れ込んで来そうな程に積もった雪だった。
どこもかしこも雪だらけで嫌になる。
しかし放置し続けて窓でも割れたら一大事だ。ゆっくりと窓を開け雪を端の方へと押し退ける。そんな一仕事を終えると暖房を付けソファーに体を投げ出した。
「疲れた…」
直帰して来てしまった為昼食や夕飯の買い出しはしていないが、確か下味冷凍したものがなにかしらあったはずだ。なくても乾麺はある。
『もうなんでも良いや…』
というより今体が求めているものは食欲よりも睡眠な気がする。まだ真っ昼間だけど別に良いやとそのまま目をつぶると眠りに落ちた。
そんな安積の目を覚まさせたのは優しく肩をたたく振動だった。
『…眠い…まだ、寝かせー
じゃない、誰??
鍵、閉めたはずだよな…』
まだ寝ていたい気持ちをはね除け目を開けると、そこに居たのはなんだか悲しそうな顔をし安積を覗き込んでいた月影の姿だった。
「ひじりか……良かったぁ」
「ごめんね、寝てたのに。驚かせた? 」
「いや、大丈夫大丈夫。寝ぼけてただけ」
いつでも来てと鍵は渡したの自分なのだから驚いてしまっては逆に申し訳ない。上体を起こし大きく延びをして眠気を飛ばそうと試みる。
「聖、眠い?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫っ、ちょー元気っ!」
「うるせェ!!! いこう!!!!」
「えっ!? 色々なんでっ!!?」
「早くっ! 出かける準備して!手袋も忘れずにね!」
「そんな勧誘っ…じゃなくてっ!どこにっ!?」
「秘密っ!!」
「えー…??」
なんだか良く分からない内に急かされるまま出かける準備を済ませ、促されるままに月影の車へと乗り込んだ。
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