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慰弦

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- 25章 -

- 不香の花 -

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「遊園地、良い思い出になったって」

「っ!?」

「良かったね。チケットあげたお姉ちゃんに感謝」

「………~っ、行くぞ、安積っ!」

「えっ!?ぅ、うんっ!?あっ!!えっと、お邪魔しました!!」

「どういたしました。気をつけて」


自分の腕を掴み逃げ出すかのように家を出ていこうとする市ノ瀬に引っ張られるまま、手を振る姉へと辛うじて挨拶だけは叫び伝え家を後にした。

言葉を交わすことなく引っ張られるままに歩みを進め、見上げたその背中からはなんだか不機嫌そうな空気が漂っている。

『なに?なんか不味いこと言った?俺??』


「ねぇ、睦月っ?」

「………」

「睦月っ!?」

「…………」

「睦月ってばっ!!」


3度目にして漸く声が届き掴まれていた腕が解放され、その場に立ち止まると上がった息を整える為に何度か深く深呼吸を繰り返す。
急に深くまで取り入れてしまった冷たい空気にむせ返りそうになるのを、息を止め何とか堪えた。


「なぁ、急にどうしたんだよ?俺なんか不味いこと言った??」

「別にっ!!」


『嘘つけっ!!』

その反応は完全になにかあった時の反応だ。しかし自身の言動を振り返っても思い当たるものはない。ただ、お礼を言っただけだ。
それの何がいけなかったんだろうか?


「えーと、遊園地行ったの、言っちゃ駄目だった?」

「そうじゃねぇよ」

「……えと、じゃぁー」

「もう良いからその話は」

「…分かった。でもなんかしちゃったならごめん」


まったく思い当たらないし、理解してない事を謝るのは失礼かも知れないけれど、教えてくれないのならしょうがない。

市ノ瀬にとってなにかしら都合の悪い事をしてしまっただろう事はありありと感られ、謝罪の言葉を口にする。

そうして申し訳なさそうな表情を色濃く浮かばせる安積に、謝らないといけないのは自分の方だと市ノ瀬は罪悪感を感じざる終えない。

安積は悪いことなど何一つしていないのだから。

『ただー』

あの時のチケットは姉が福引きで当てた訳でも貰った訳でもなんでもない。
普通に購入した物だった。
ただそれを言ったら遠慮して安積が全力で楽しめなくなってしまいそうで、更には代金をーとか言い出しそうだったのが嫌で貰ったと嘘をついた。

その事が姉にバレてしまったのが気まずいやら居たたまれないやら、恥ずかしいやらであの場に居られなかった。

冷静に考えれば安積の性格からしてお礼を言うのは想像できる事で…


「失敗した…」

「え?」

「失敗した失敗した失敗した失敗したっ!!」

「えぇっ!?落ち着いて!!そもタイムリープしてないよ!?多分っ!?」

「したいくらいだよっ!」

「えぇー……(;´д`)」
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