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慰弦

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- 25章 -

- 不香の花 -

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「さっき、前を向かないとって言ってたけど、別に無理してそうしなくても良いんじゃないか?」

「…でもそれじゃぁー」

「どうせお前の事だから誰かに心配とか迷惑とかかけるかもって思ってるかもしれねぇけど、雪が嫌いなままでも自分を許せなくても、良いだろ別に」

「……どうして?」

「嫌いだから、許さないから、同じ事をしないように出来るんだろ?戒め…と言うか、教訓として」


やらかしたことを覚えてるからこそ、出来る事だってある。思い出してなんて事してしまったんだろうと落ち込むことだって勿論あるけれど……あの時の自分に腹立たしくも悔しくもはあるけれど、これは身をもって言える事だ。


「それに、自分の気持ちをねじ曲げて無理矢理前向こうとしても疲れるだけだろ。じっくり落ち込んで、じっくり考えて、じっくり教訓にしてけば良い」

「教訓……」

「そう。その過程で辛かったり悲しかったり、誰かに迷惑かけて申し訳ないって落ち込むなら俺の所にくればいい。馬鹿みたいに甘やかしてやるから。前に言っただろ?お前にかけられる迷惑なら喜んでかけられるって。いい加減分かれよ馬鹿」

「……お前って、本っ当ストレートにもの言うよな」

「じゃなきゃ伝わんねぇだろ」

「…なんかっめちゃ口説かれてるみたい」

「ばっか、口説いてんだよ。ばーか」

「馬鹿馬鹿言うなよっ」


少しおちゃらけるのは居たたまれなさからなのか照れ隠しなのか。なんなのかは分からないけれど、なんにせよいつもの調子が少しでも戻ってくれるならどうでも良い。安積が元気になってくれるならなんだって良い。


「さっきさ、都合良く忘れてた自分が許せないって言ってたけど…俺は、忘れてた事も思い出した事も、どっちも意味のある必要な事だったと思うよ。だから……頑張れ、安積」


頭に置いた手を2度3度あやすように動かすと、最後の壁が崩壊したかのように押さえていた声が漏れだし、そうはさせまいと慌てて手を口に当てた。

『こいつ、結構泣くよなぁ……』
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