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- 25章 -
- 不香の花 -
しおりを挟む家族間が壊れてしまったのではという心配はどうやら杞憂らしい。2人の間でどんな会話がなされたのかは分からないけど、安積の環境を壊す事なく今の状況を作り上げるのはそう容易い事ではなかっただろう。
安積が安積のままで居られるのは、きっとこういう周りの人のおかげと言うのもあるのかもしれない。感謝すると同時に、自分もそういう人間であれたら良いと思った。
思いこそすれ、実際大した事を言ってあげられないのは申し訳ないし力不足を感じる所ではあるけれど、それは日々成長していければ良いわけで。
兎に角今は、こうして色々と話してくれるのが嬉しい。どんな事でも、安積の事を知れるのは嬉しい事だ。嬉しいのだけれど…
この話は今日様子がおかしかったのと何か関係があるのだろうか?というか、あるのだろう。そんな確信にこれから話されるであろう内容に嫌な予感しかしない。そんな中再び安積が口を開く。
「聖はさ、今も昔も大事な弟だって言ってくれる。だから、謝る事なんてなにもないんだって。今大切だと思う人達に出会う為には、自分の人生どれがかけても駄目なんだって。俺の母親にまで感謝してくれたんだ…だけどー」
不自然に詰まった言葉を不振に思い声をかけようとした時、突如右手に被さるように強い力が加わった。それが何かなんて見なくても分かる。
1度ほどかせると今度は手の平を向かい合わせるように繋ぎ直した。
「…一緒に住んでた時、親戚の人だって聞かされてた。悪い人だから、会っちゃ駄目だって。母さんに。聖も部屋から出てこなかったし…」
『なんだそれ?一緒の家に住んでんのに会わせないようにするなんて…そんなのもう、軟禁してるようなもんじゃないか』
顔を合わせる事なく同じ家で生活するなんて、風呂やトイレ、食事はどうしてたのだろうか?そんな疑問に浮かび上がるのはどれも最低なものばかりで1人奥歯を噛み締める。
「だけどね、俺には悪い人には見えなかった。会えば笑って出迎えてくれて、陽の下で見る目は綺麗な海色で、そんな優しい聖が大好きだったんだ。だから、母さんにバレないように良く会いに行ってた」
並んで座ったその膝の上に雫が落ちるが、気がつかなかった事にして俯くその頭に自身の頭を寄せた。
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