Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
703 / 1,107
- 25章 -

- 不香の花 -

しおりを挟む


それならそれで安心だし、そうさせてあげられたのなら嬉しい事ではあるが、でもそれだけでは根本的な問題解決にはならない。

言いたくないなら言わなくて言い。
話たくないなら話まで待つ。
それで駄目なら俺は俺のやり方で。

話せるようになるまで待つつもりで居たけれど、雪の中佇む姿を思い出すと悠長な事は言ってられない気がする。

『どうすっかなぁー』

ベッドの上で胡座をかき内容の入ってこないTVを取りあえず眺めながら思考ー…

『まぁ、聞けばいいか。普通に』

も数分。
うだうだ回りくどいことは好きじゃない。
言いたくなければ言わないだけだとの結論に至り食べ終わるのを待つことにした。

『にしても…寒いな』

エアコンの温度を上げなんとなしに窓へと目を向ける。カーテンを指先で数㎝退けて外を覗くと、相変わらず止む素振りの見せない雪が降りしきっていた。


「止みそうにないね」

「ん?あぁ、そうだなぁ」

「おにぎり、ごちそうさま」

「あぁ、うん」


いつの間にか隣に来ていた安積が同じようにカーテンを開け並んで外を覗き込む。雪から窓ガラスに映る安積へと視線を移すと直ぐに気がついたようで、窓ガラスを介して市ノ瀬へと笑みを向ける。


「睦月」

「なに?」

「ありがと」

「なにが?」


お礼を口にするとカーテンを閉め床に座り込もうとした安積の腕を掴んだ市ノ瀬は、ベッドへと誘導し座らせると自身も隣に腰を下ろす。
誰かを自宅に呼んだことなど殆どないので、残念ながらクッションなんて気の利いたものはなかった。


「別にさ…今まで隠してた訳じゃないんだよね。俺も、ひじりも」

ひじりさん?」

「ただ、まぁ、あまり楽しい話じゃないから…」


話し始めたは良いけれど、言いづらい事なのか終始落ち着かない様子で指先を弄っている。なにか落ち着かせてあげられる方法はないだろうかと足元に畳まれている毛布を引っ張り出し2人でくるまるように肩にかけた。


「…寒かったから」

「うん…」


小さな驚きの後照れ笑いを浮かべ市ノ瀬にかけられた毛布を掴んだ安積はより一層くるまるように手繰り寄せ、寄り添うように少し空いていた2人の間を詰めた。


ひじりの母さんはね、出産と同時に亡くなっちゃって、数年後にひじりの父さんが再婚したのが俺の母さんなの」

「…そう」

「でも…なにが原因だったのかは分からないけど……俺の母さんがひじりに、その…酷いことしてさ。俺が産まれる前に孤児院に預けられる事になって」

「……は?」

「で、俺が…多分3、4歳の頃に1回戻ってきたんだ。でも、母さんはひじりに優しくする事が出来なかったんだよね。ひじり、いっつも怪我してた。結局、1年くらいでまた孤児院に戻ることになっちゃうんだけど…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

処理中です...