688 / 1,142
- 25章 -
- もういくつ寝ると -
しおりを挟む「…お父さん?」
「…え? あっ!いやっ、お父さんというか、そのっ」
「お父さんか」
「ちっ、違う!違くて、違くないけどっ!!」
「なに焦ってんだよ?」
「なんか、ごめん…父親みたいなんて言われても嬉しくないよね。ごめん」
親のような偉大な愛や寛大さや安心感も兼ね備えている、的なニュアンスの事を伝えたかったのだけれど、まだ10代の同い年で、しかも恋人から父親と言われるのはあまり嬉しくなかったかもしれない。失言だった。
自身の発言に後悔し項垂れる植野を、心底不思議そうに眺めた鈴橋が首を傾げる。鈴橋にとって、父親の様と言う言葉は嫌悪を抱く言葉ではなくー
「なんで?普通に嬉しいけど」
「え?」
「父親にもなれるなんて、役得じゃないか」
植野自身に自覚はないかもしれないけれど父親を連想させる場面で悲しそうな顔をする時があるのはずっと気になっていた事であった。
そんな植野に対して出来る事の少なさにもどかしさも感じる事も多々あり、だからこそ “ 父親 ” と言う物を少しでも与えられるのならそんな嬉しい事はなかった。
しかし実の所、植野が物心付いた時には既に父親は居なかった為、父親の様だとは言っても本当の父親がどんなものなのか分からないのが正直な話で。寂しく感じてたのも劣等感を持ってたのも昔の話。
だから父親みたいと言うのは想像上の話でしかないのだけれど、それでももし父親が居たのなら、鈴橋が持つ1面のような部分もあるのだろうなと思ったのは事実だった。
誤解無いように言っておくが、勿論恋人として好きだと言う気持ちも平行してある。
そしてそんな思いですら嫌がる所か役得だと言いきる姿に胸が熱くなる。
『懐広すぎだよ…がっくん』
「…好きになったのが、好きになった人で本っ当に良かった」
「そうか。よく分からんが、それは良かった」
とは言えこれは課題だと頭に止めておかないと。不安に感じてしまう事は話し合って行けば良いとも思うけど、そもそも不安にさるなんて事はない方が良いに決まっている。鈴橋が自分の為にと何かしらの劣等感を感じる必要なんて全くないのだから。
「なんか、面白いな」
「ん?なにが?」
「俺は、母親みたいだって思ったから」
「えっ!?」
「……誉めては、居るんだが」
「そ、か…ありがとう」
なんとなく気まずい空気が漂う。父のようだと言った言葉を謝罪したと言うことは、親のようだと言うことは植野にとっては嬉しくはない事だったのかもしれないと遅ればせながら気がついた鈴橋は慌てて謝罪を口にする。
「悪い。今のは失言だった」
「えっ、いやっ、そんな事はない、んだけど…なんか」
「…なんか?」
「いや、うーん…」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる