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慰弦

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- 25章 -

- もういくつ寝ると -

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安積達と居る時と鈴橋と居る時の“楽しい”はまったくの別物であり、鈴橋と居る事でしか得られない物がある。


「不満なんてあるわけないじゃんっ!だってー」


自分と居ても楽しくないのではないか、とでも言いたげなそんな悲しい鈴橋の言葉を全力で否定しようとし“はっ”とする。自分達の関係を知っている班乃は良いとしても、他の2人に知られるのはまずい。慌てて周囲に視線を巡らせるがー


「…ぁっ、あれっ?」

「なんだよ?」

「あっきー達は?」

「言い争い終わった後直ぐ教室戻ったけど。やることあるとかで」

「え?本当??気がつかなかった」


真剣に見つめてくる鈴橋の視線には未だに平常心ではいられず無駄に心拍数が上がってしまう。そんな心情で鈴橋の言葉を待っている間に演劇部組は撤収していたようだ。

とはいえ他の生徒もちらほらと居る中での発言は慎重にならないとと言葉を選んでいく。


「あのね、がっくん」

「ん?」

「友達から貰う楽しいとか嬉しいとかと、好きな人から貰う楽しいとか嬉しいとかは全くの別物なんだよ。だからそもそも比べられるものでもないし、そうじゃなかったとしても好きな人から貰う方が断然嬉しいよ」

「でも、俺はお前にそんなものあげられてないし」

「なに言ってんのっ!いっぱい貰ってるよっ!!好きだからこそドキドキして落ち着かない時とかも結構あるけど、それだって凄く幸せだぁーって思うし、会話なんてなくても2人一緒にぼんやり過ごす時間だって、一緒に居られるだけで俺にとって何物にも変えられないかけがえのない大切な時間なの」


まさか “ 不満に思われてるかも ”  なんて感じさせてしまって居るとは思ってもなかった。

自分の気持ちを口にする事が得意ではなく、それ以前に自分の感情にすら疎い彼にずっと側に居て教えてあげるなんて言ったのは自分なのに。

そんな彼にそんな事を感じさせて口に出させた上、不安の種を植え付けるなんて事を自分がしてしまうなんて本末転倒だ。


「あっ! あと、そうっ!結構男前な所とか、いつも冷静に物事考えて行動出来る所とか、こう、どっしり構えててくれるから安心感もあって凄く落ち着くんだよね…なんと言うか…お父さん!!みたいな??他にも好きな人とだからこそ感じられる事はたくさんあるし!だから俺は他の誰と何をするよりも好きな人と一緒に居るのが一番幸せって思うよ!」


頭の中でどういう経過があり先程の発言に至ったのかは分からないけれど、自分と他の人を比べて何かを不安に思ったのだろうと言うことは手に取るように分かった。不安に思う事なんてなんにもないのに…そう思わせてしまったのは自分の力不足を感じざるおえない。
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