687 / 1,142
- 25章 -
- もういくつ寝ると -
しおりを挟む安積達と居る時と鈴橋と居る時の“楽しい”はまったくの別物であり、鈴橋と居る事でしか得られない物がある。
「不満なんてあるわけないじゃんっ!だってー」
自分と居ても楽しくないのではないか、とでも言いたげなそんな悲しい鈴橋の言葉を全力で否定しようとし“はっ”とする。自分達の関係を知っている班乃は良いとしても、他の2人に知られるのはまずい。慌てて周囲に視線を巡らせるがー
「…ぁっ、あれっ?」
「なんだよ?」
「あっきー達は?」
「言い争い終わった後直ぐ教室戻ったけど。やることあるとかで」
「え?本当??気がつかなかった」
真剣に見つめてくる鈴橋の視線には未だに平常心ではいられず無駄に心拍数が上がってしまう。そんな心情で鈴橋の言葉を待っている間に演劇部組は撤収していたようだ。
とはいえ他の生徒もちらほらと居る中での発言は慎重にならないとと言葉を選んでいく。
「あのね、がっくん」
「ん?」
「友達から貰う楽しいとか嬉しいとかと、好きな人から貰う楽しいとか嬉しいとかは全くの別物なんだよ。だからそもそも比べられるものでもないし、そうじゃなかったとしても好きな人から貰う方が断然嬉しいよ」
「でも、俺はお前にそんなものあげられてないし」
「なに言ってんのっ!いっぱい貰ってるよっ!!好きだからこそドキドキして落ち着かない時とかも結構あるけど、それだって凄く幸せだぁーって思うし、会話なんてなくても2人一緒にぼんやり過ごす時間だって、一緒に居られるだけで俺にとって何物にも変えられないかけがえのない大切な時間なの」
まさか “ 不満に思われてるかも ” なんて感じさせてしまって居るとは思ってもなかった。
自分の気持ちを口にする事が得意ではなく、それ以前に自分の感情にすら疎い彼にずっと側に居て教えてあげるなんて言ったのは自分なのに。
そんな彼にそんな事を感じさせて口に出させた上、不安の種を植え付けるなんて事を自分がしてしまうなんて本末転倒だ。
「あっ! あと、そうっ!結構男前な所とか、いつも冷静に物事考えて行動出来る所とか、こう、どっしり構えててくれるから安心感もあって凄く落ち着くんだよね…なんと言うか…お父さん!!みたいな??他にも好きな人とだからこそ感じられる事はたくさんあるし!だから俺は他の誰と何をするよりも好きな人と一緒に居るのが一番幸せって思うよ!」
頭の中でどういう経過があり先程の発言に至ったのかは分からないけれど、自分と他の人を比べて何かを不安に思ったのだろうと言うことは手に取るように分かった。不安に思う事なんてなんにもないのに…そう思わせてしまったのは自分の力不足を感じざるおえない。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる