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- 25章 -
- もういくつ寝ると -
しおりを挟む安積達と同じテンションで騒いでいる時もあるとは言っても2人でいる時は合わせてくれているのか落ち着いている事の方が多いし、誰かと言い争っている場面は見たことはない。
会話のテンポも息をするように言葉を交わす安積達とは違い、焦らず相手の返答を待つかのような間が心地良く見守るようなその目はどこか母性すら感じさせる。
とは言え身長は平均より高い方で毎日の部活で鍛えられた体はそれなりに筋肉質であり、女性らしさの欠片もないのだけど…
そう言った外見的な事や常に自分を思い見守ってくれているような優しい目が安心感をもたらしてくれているのは間違いない。
それ故に自分を好きでいてくれていると感じる事が出来るのも大きい…からかもしれない。
『でも…』
今まで愚痴や不満と言った事をほぼ聞いた覚えがない事や、安積達と居る時と自分と居る時との違い。
“ 見守る ”という事は、何かを“ 待たせている”
と言う事で、大人ではないけれど子供でもない相手にそんな事を常にさせられていればやはり疲れるしイラつきもするだろう。
植野の告白から返事を返すまで大分長い間待たせてしまったが、理由は違えど多方面で待たせてしまっているのは今も変わらない。
あの時から何一つ成長せず待たせてばかりで、今も疲労を溜めさせてしまっているのではないか。優しい性格故に不満も言えぬまま、いつかは嫌気がさしてしまうのではないか。
このままでは…嫌われてしまうのではないか。
そんな気付きで胸がざわつくのを感じた。
「…ちょっとがっくんっ、そんな見つめられたら穴空いちゃうっw どうしたの?なんかあった?」
「……お前、さ」
「ぅん?」
「俺と居て楽しいか」
「Σ えぇっ!?なになに急にっ!?楽しいに決まってるじゃんっ!え、なにっ、どうしたの?なんかあった?」
頭の中で完結してから結論を言う鈴橋のその話し方は、急速に変わる安積達の会話に負けず劣らず他人を置いてけぼりにし困惑させる時がある事は今の所本人に自覚はない。
子供に対しては事細かく筋道を通して話をするのに、子供以外だとこうなってしまうのは不思議だ。
「…安積達と居る時の方が楽しそうだと思って。俺に無理に合わせてくれてるなら申し訳ない。不満があるなら言って良いから」
乏しい表情の中に落ち込んだ空気を感じ取る。
でもー…
『そんなの、どっちの方が良いとかって話じゃないと思うんだけどなぁ…』
一言に楽しいと言っても、楽しいの種類は1つではないのだから。
それが一緒に居て落ち着く要因なのかもしれない。
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