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- 25章 -
- もういくつ寝ると -
しおりを挟む「あーーもうっ!うっさいなぁ、もうっ!!」
「はぁ!?」
「今頭いっぱいなのっ!混乱中なのっ!」
「だからって人にあたってねぇで少しは頭鍛えろ馬鹿っ!!ったく……で? なにでそんな頭混乱させてんだよ」
けれど言い争いをしたところでなにも解決しないのは分かっている。一先ず文句を言い終わった所で頭を切り替え安積の奇行の原因を探ることにした。
「ごめん。…あのさぁー」
「ん?」
「後で話したい事があるんだけど、ちょっと時間ちょーだい」
「分かった」
『なにこのテンションの変化球っ!?』
今までの言い争いが嘘のように急に大人しく昼食の片付けに取りかかる2人のテンションにうっかり置いてかれそうになる植野だったが、この急速な変化に乗り遅れることなくさも当然かのように会話のキャッチボールをする2人の息の合い様は流石としか言いようがない。
挟まれていた班乃も2人の言い争いが終わるとなに事もなかったかのように笑っているし、これは演劇部組が共に過ごしてきた時間の賜物なのだろう。
しかしその笑顔には安堵と少しの残念そうな表情が含まれているように思えた。
「面白いねぇ、演劇部組」
「…内輪には入りたくないけどな」
そんな植野の言葉に鈴橋の口からは盛大な溜め息が出る。確かに見ていて飽きないとも言えるかもしれない。けれど、それと同時に感情の起伏の激しさに疲れるのも確かだ。出来る限り傍観者に徹するに限る。感情に素直な事は良いことだと思うけれど…
『感情に素直…か』
それは植野にも言えることではないだろうかとふと頭を過る。そんな気付きに隣に座る植野へと視線を向けた。
彼ら、というか安積同様、嬉しい時は素直に笑うし泣きもする。照れたり悲しんだりと表情も豊かだし、行動だけじゃなく気持ちも言葉として伝えてくれる。人の感情の変化に鈍感な自分にとってとてもありがたいことだ。
そんな自分と違って他人の変化に敏感なのは植野も安積も同じ所ではあるし、2人同じテンションで騒いでいる時もある。
なんとなく似ては居るのだけれど、それでも植野と居て落ち着くのはなんでなのだろうか?
まじまじと植野を見つめたままその問いに頭を巡らせる。分かりやすい所で言えば目に見える外見もあるだろう。
童顔でつり目気味な幼さを残す顔立ちに明るく金に近い色と毛先が黒という馬鹿げた髪色をしている安積とは違い、植野は穏やかな目元と幼さをあまり残さない顔立ちをしており、髪色は濃いめのミルクティー色でセミロングというどこか女性的な印象を与える髪型をしている。
どちらが落ち着いて見えるかと言われれば植野だろう。
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