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- 25章 -
- もういくつ寝ると -
しおりを挟む口にこそ出さないが植野もなんだか納得したような顔をしており、唯一鈴橋だけが自分と同じように不思議そうな表情を浮かべている事に親近感を覚える。
だって、ねぇ? とでも聞こえてきそうな様子で3人で視線を送りあい、代表するかのように班乃が声を上げた。
「なんというか、愛に満ち溢れている、というか、ねぇ?」
「優しさと言う愛をね、振り撒いてるよね全域に。せーちゃんはさ」
「振りっ、愛の伝道師みたく言うの止めてっ!!?」
「「愛の伝道師……?」」
「誰もそんなこと言ってねぇだろ」
「Σ(´□`;)!?」
ノリと勢いで出てしまった言葉に後悔を覚えても後の祭りだ。そう、部活を決める際に植野が“女の子役に適任じゃない!?”と言ったあの日から見事にそれが定着してしまったように、きっとこの言葉も定着してしまうに違いない…
「まっ、素敵じゃないのっ、愛の伝道師っっww」
「笑い隠せてないからねっ!?」
「そうですよ、愛の伝道師たる安積の愛に救われた人だってたくさん居るんですから。ねぇ、睦月?」
「…そうだな、愛の伝道師のご活躍とその恩恵、盛大に期待してるわ」
「っ~!!」
これは、俺を好きになれアピールかっ!?
それとも、ただからかってるだけかっ!?
残念だったな!もう大好きだよっ!?
『って、なに考えてんの俺っ!?』
色々な意味で熱を持つ顔を両手で覆い隠し、出来るだけ体を縮こめた。異母兄に相談し気持ちを伝えようと思ったけれど、それは今だに出来ていない。冬休み前にするか後にするかもまだ迷って居る状況下で、この手の話題は地味に辛い。
好きだと伝える事。
班乃の誕生日の事。
異母兄の誕生日…はお嫁さんと祝うらしいからメールで済ませるとして
クリスマスや、初詣。
考える事の多さとその難題さ、やる事の多さに頭が混乱しそうだ。勿論初詣は嬉しいに違いはないのだけど。
なにから考えれば良いのか取りあえず絞って行かないと全部中途半端にしてしまう気がする。市ノ瀬の事は…申し訳ないけれど少し後にするとして、目下は日にち的にも班乃の誕生日だろう。
迷惑かもしれないけれど…やはり誕生日はなにかしてあげたい。というよりも、お礼や感謝は伝えたい。なにか自分に出来ることはないだろうか。
せめて、少しでも喜ばしい日になってくれると良い。
あまり大勢でやるのは違う気がするし、市ノ瀬に協力してもらって3人で……といっても、まだなんの案も思い浮かばないのだけど。
それに次の日はクリスマスイブだし、やるならあまり遅くならない時間帯が良いのかもしれない。もしかしたら市ノ瀬がなにか企んでる…かもしれないし、そうでもないかもしれないし…取りあえず予定は開けておきたい。
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