Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
677 / 1,142
- 25章 -

- もういくつ寝ると -

しおりを挟む


付き合っているとしたら流石の安積でもクリスマスは家族と過ごすものとしてではなく市ノ瀬との予定を入れるだろう。

『いや、もしかしたらあえて家族と過ごすものって言って隠している可能性もー…』

昼食のゴミを片しながら然り気無く市ノ瀬へ、それから班乃へと視線を流す。班乃は通常通り、市ノ瀬は微かに不服そうな表情に見えるが…正直予測はできない。

どちらにせよ、世間が賑やかになる中あの安積が自宅で1人きり過ごしている。そう考えたら自分でさえもやるせない気持ちになるのだから、この2人が放って置くなんて考えづらい。

しかし、クリスマスは班乃にとって手放しに祝うのは難しいのかもしれない。立ち直ったように見えてもまだ日は浅く、瘡蓋になった心の傷はきっと些細な事でも剥がれてしまうだろう。

『…いや、だからこそ皆でクリパもあり?』

しかし市ノ瀬がクリスマスに安積との予定を考えて居ないと言うのも考えづらい。

ここでクリパーなんて言ったらかなり空気の読めない奴だ。悶々と考えを巡らせていると不意に視線を感じ顔をあげる。そこには優しそうに微笑み自分へと視線を向ける班乃の姿があった。もしかしたら自分がなにを考えているのかお見通しなのかもしれない。

微笑みを浮かべたまま今度は班乃が市ノ瀬へと視線を投げ、アイコンタクトを取ったかと思うと静かに口を開いた。


「それなら折角ですし、皆で初詣でも行きません?」

「えっ?」

「皆さん空いてる日ありますか?」

「家は家族で初詣なんて行かねぇし、いつでも」

「右におなじっ!がっくんは?」

「俺もか…?」

「当たり前でしょ!」

「……1日は家族で初詣行くから、それ以外なら」

「3日は僕が予定があるので…2日で良いでしょうか?」

「全然OK!! じゃぁ、何処にしようか??」

「あまり混まない所が良い…」


心配を他所に問題なく“皆で”の予定が決まり植野はホッと胸を撫で下ろす。安積も勿論だが、班乃に対してもだ。

『…1人にならなくて良かった』

考えすぎかもしれないけれど、自分と鈴橋、安積と市ノ瀬と、なんだか班乃がハブれたような形になってしまったのには少し気が引けていた。

恋人との時間も勿論大切にしたいけれど、だからといってずっと良くしてくれていた親友との時間を蔑ろにするのは申し訳ない。というか、それ以上にそんな薄情なことはしたくない。

正月というタイミングで予定が決まった事でクリスマスで気分を落ち込ませて居ただろう班乃を少しは元気付ける事も出きるだろうし、ひとまずは一安心だ。

しかしー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...