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- 24章 -
- 財布拾っただけなのに -
しおりを挟む「これは…」
「勝手にすいません。銀杏の葉だけだとなんか味気なかったので、文化祭でハーバリウム作った時のあまり使ったんですけど…」
「いえ、わざわざありがとうございました。とても綺麗ですよ。2人もきっと喜ぶと思います。でも、なんでこの色を?」
3枚の栞には名前こそ分からないが、紫、青、黄色の花が角の方に各々控えめに押されていた。それは偶然にも安積が作ってくれたキーホルダーとすべて同じ色で、驚きと共に問いかけると鈴橋は不思議そうに首をかしげた。
「お揃いでキーホルダー持ってませんでしたっけ?取りあえずその色に合わせてみたんですけど」
「凄い、よく見てますね」
「別にそんな凄くなんて…たまたまですよ」
謙遜しているけれどキーホルダーをつけ始めたのはつい最近の事で、市ノ瀬に至ってはケースを買い換えてからなのでほんの数日前だ。それに気がつき色まで記憶しているなんてそうそう出来ることではないし、それを栞にする迅速さと器用さも持ち合わせて居るなんて…
「学君は、実家継ぐんでしたっけ?」
「え? あぁ、はい、勿論」
「学君なら良い先生になれますね、きっと」
「え?ありがとう、ございます?」
謙遜ではなく誉められる事だと本気で思っていないような、なんだか煮え切らないようなお礼を口にする姿に苦笑するしかない。ここまで思いが伝わりづらい鈴橋を意中に仕止めた植野の苦労は計り知れないなと場違いな事を考えている内に別れ道へとついた。
挨拶を交わし班乃と別れ暫し歩いた所で、鈴橋が片手で顔面を覆い大きな溜め息をつく。少し落ち着た所で自分達の事が知れてしまった実感が強く襲ってきたのだろう。
鈴橋との事が進展できたのは班乃の力が大きく相談した事が間違いとは思わないが、知られたくないという鈴橋にそれを打ち明けるつもりはなかった。
いつかは鈴橋とも自分達の事を知っている人として付き合っていければ良いなと思っては居たけれど、まさかこんな打ち明け方になるとは想定外で申し訳なさしかない。
「ごめん、がっくん」
「いや。寝てたとはいえ会長が居る前であんな会話してた俺にも落ち度はあるし、誰かに相談する程悩ませてたのも俺だし…それに、あんなしっかりしてる会長が同じような経験があるって分かったら、話を聞いてもらいたくなるのも分かる……」
「ありがと…」
「偏見なく聞いてくれる人なんてそうそう居ないと思うし、多分会長のおかげで今お前とこうして居られるんだと思う。感謝すべき所だってのも分かってる、んだけど…」
「うん」
「やっぱり、あれだな…」
「ん?」
「少し、気恥ずかしいな」
「んっ!?」
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