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- 24章 -
- 財布拾っただけなのに -.
しおりを挟む「あれ、学君は?」
「部室に荷物取りに行ってる」
「そうですか」
事情が事情であり更には葉斗からの言伝てもあった為今回は特別拝め無しと言うことで、最終下校時間の過ぎた門の前では班乃と植野、そして少し離れて教師の3人が最後の生徒である鈴橋の到着を待っていた。
特別話をするわけでもなく2人並んでなんとなく周りの風景を眺める時間が過ぎていく。チラリと横に立つ班乃を見ると、目をつぶり防寒具のない耳に手を当て寒さを耐え忍んでいた。
鈴橋に他人や友達には聞いちゃ駄目だと言ったは良いけれど…実はずっと気になっていた事があった。それはその事実を知った時からずっと気になっていた事で、だが聞くのは少し躊躇われていた事である。
今を逃したらもう聞けるタイミングはないかもしれない。周囲に人が居ないことを確認し、教師に聞こえないように声を落として話しかける。
「ねぇ、明?」
「なんです?」
「明はさ、その…どっちの経験があるの?」
「なにがです?」
「だからさ、その…あるじゃん。猫とか、なんとかって」
「猫、とか…」
一瞬なにを聞かれているのか分からなかった。
そんな問をされるなど思ったことすらなかった為、遅れて追い付いてきた思考に班乃は目を丸くし植野へと視線を向ける。マフラーに顔を埋め半分しか見えていない顔からは表情が読みづらいけれど、そんな事はどうでも良い。
『さっきはあんなに必死になってたのに…』
「…呆れた。学君にはあんなに必死に止めておいて、自分は良いんですか?」
「いや、だってねぇ…俺はもう今更というか…やっぱりちょっとは知識つけてリードしたいと言うか…それにほら、別に自分達の事聞いてるわけじゃないし」
植野にとっては相談などを通し鈴橋があらぬ妄想に登場させられなければなんの問題はない事であり、それよりもいざという時にグダグダとカッコ悪い事にならないよう知識をつけておきたい気持ちが強かった。
『なにか少しだけでも、参考に出来そうな事があれば最高なんだけど…』
反応のない班乃を祈るような気持ちで見ると、珍しく眉間にシワを寄せ嫌悪感丸出しな表情が向けられていた。
「僕の事なら別に良いと?僕にもそれなりに恥じらいと言うものはあるんですけど」
「そうなの?…じゃぁさわりだけでも」
「ちょっと、失礼すぎません?というか、なんですさわりって…」
どっちの経験があるかなんて聞いて植野になんの得があるというのか。流石に詳細までは話しづらい…しかしさわりだけと言うのなら別に隠すまでもないかと、それでも周囲を気にして小声で答えた。
「……両方」
「両方?」
「ありますね」
「両方っ!?凄っ…オールマイティーかよ」
「…別に誉められる事ではないですよ。たまたまです」
『両方…両方かぁ……』
その整った顔立ちは演劇部での配役も相まって、“王子さま”イメージが強くあまりそっちのイメージはない…のだがしかしだ。改めて見れば長めな睫と少したれ気味の穏やかそうな目もとは儚げな印象もなくはない。鈴橋がぽろりと可愛いと呟いたのも頷ける。
もし班乃が全くの知らない人で、写真だけをみせられ行けるか行けないかと聞かれたら…
『多分全然行けるな…』
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