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- 24章 -
- 財布拾っただけなのに -
しおりを挟む『なんだ、この空気…?』
若干ピリついた空気に状況が掴めず、見つめ合う2人を鈴橋はただただ見守るしかない。
そんな中先に口を開いたのは、不自然な姿勢で寝ていた為に痛む体を大きく伸ばし首を回した、なんとものんびりとした仕草の班乃だった。
「色々ありがとうございます学くん。すいません、いつの間にか寝てしまっていたようで」
「あっ、いえ、元はと言えば俺のせいですから。これくらいはやらせてください。それよりも、…その」
どこからどこまで聞かれていたのか、やっぱりとはどういう意味なのか、班乃はなにを知っていて、それは植野の気まずいその表情に関係があるのか、もし自分達の事が知られていたとしたらー
「綾雪は分かりやすいですからね。学君を好きなんて事はとっくに知ってましたし、それなりに話も聞いてましたから」
「……植野?」
「いや、それはーその」
蛇に睨まれた蛙宜しく、鈴橋の視線を受けた植野は冷汗が見えそうな程に固まっている。植野の気持ちに気が付いて突っついたのは自分なので少しばかり可哀想にも感じるし、自分もなんだかんだ植野には恩がある…ここは少しだけでもフォローを入れておこうと班乃は口を開いた。
「あぁ、怒らないでください。稜雪は稜雪なりに色々悩んでたんですよ。それに誰にでも相談できることじゃないですし、たまたま僕が…そうですね、付き合ってはないですけど、同性と近しい経験とか、まぁ色々とあったので話を聞くことが出来たってだけなんですよ」
「……え?」
『偏見がない、ではなく、近しい経験がある?
好きだったけど付き合えなかったってこと?
それとも、まさかー』
班乃の発言の意味をグルグルと考える鈴橋をよそに、植野の班乃の会話は続いていく。
「それで?いつから付き合ってたんですか?」
「……文化祭」
「そうですか。そんな前から。僕は僕なりに真剣に話を聞いていたのに、報告してくれなかったのは寂しいですね」
「いや、だってほら、それは…」
分かっている。自分達も文化祭からは色々とゴタゴタしていたし、自分に至っては失恋したと泣きながら愚痴を聞かせてしまったのだ。言える空気ではなかったのは十分に分かっている。
というか最後のは失態過ぎて、班乃にとってはもはや消し去りたい記憶だ。
まさか人前で泣くとは思ってもなかったし、負け惜しみのような愚痴を言うとも思ってなかった。
色々と話しすぎてしまっているせいか、どうも植野の前ではみっともなく子供のようになってしまっていけない。
『気を引き締めないとですね。……ちょっとだけ』
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