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慰弦

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- 24章 -

- 財布拾っただけなのに -

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「んー…ないなぁー。そっちは?」

「見当たりませんね」

「本当にここにあるのかよ」

「さぁ」


顧問に頼まれた探し物をする為、安積達3人は普段使われていない倉庫代わりの教室へと来ていた。頼まれたのは班乃1人であったが、ありがたい事に事情を聞いた2人も手伝いを申し出てくれ3人で探す事となったのだ。

普段使われていないとは言えそこまで埃が溜まっているわけではなさそうなのだけれど、以前の二の舞をさける為一応念には念をと班乃が窓を開けたその時ー


「あっ! 」

「「Σ っ!?」」

「すいませーんっ!!あのーー!!あっ、あぁー……」

「なっ、なになにっ!?びっくりしたぁっ!」

「んだよ、急に。どうした、大声だして」


窓を開けた班乃が突如叫んだかと思うと、落胆の声を発し溜め息つきながら窓から乗り出していた体を戻した。


「あぁ、すいません、驚かせてしまって。下を歩いていた生徒がなにか…多分お財布を落として見づらい所入っちゃって…ちょっと拾ってきますね」

「ほっとけよそんなん」

「優しさどこ行ったっ!?」

「残念ながら全人類に向ける程持ち合わせてねぇ」


そんなやり取りに苦笑しつつも教室を出ていく班乃を見送くってから仲良く窓をのぞく2人だったが、財布らしき物はどこにも見えない。定期とか入ってたら帰れないし、見つけてもらえた子はラッキーだな、とぼんやり考えていると丁度班乃が姿を表した。

『見づらい所って、どこ落っこってんだろ…あっ、垣根の裏??これは見つからないやつだ。良く気づいたなぁ、あっきー』

視線の先では班乃が落ちているであろう所にしゃがみこみキョロキョロと辺りを見回し、どうやら無事見つけたらしく腕を伸ばした。


「あ、あれ学じゃね?」

「ん? あっ、ホントだ!今日も元気に水やり中じゃん!本当部活大好きだよね、がっくん」

「そうだな………なぁ、安積」

「ぅん?」

「あれ、まずくね?」

「えっ? ……あっ!?」


無表情だがどこか楽しそうなオーラを放つ鈴橋が、歩きながらてきぱきとホースで水やりをする。

その進行方向はー…


「あっきぃっ!!」
「がくっ!!」


ほぼ同時に響いた2人の声に
手も足も止めることなく顔を向ける鈴橋と
無事財布を拾い終わり立ち上がった班乃が
同時に顔を上げた

そして、次の瞬間にはー


「あぁ……っ!!」

「遅かったな……」

「………水も滴るなんとやら」


頭から水滴を滴らせた班乃と、青い顔をした鈴橋が顔を見合わせていた。
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