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- 24章 -
- 普通 -
しおりを挟む満腹感と疲労感から静かに目を閉じ大きくため息をつく。今しがたの話を頭の中で反芻させ今後について考えてみるけれど、もう、答えはほぼ出ているようなものだ。
後押ししてくれたのは他でもない、兄の応援するという言葉だった。
『でも…本当にそれで良いの?』
何度も何度も自分に問いかける。
好きとはなにか
幸せとはなにか
市ノ瀬にとっての幸せとはなにか
自分にとっての幸せとはなにか
その為に、今自分の手の中にある“なに”を手離すのか
そして、自分にとっての決め手とはなにか
まだ不明瞭な事もあるし
出した答えに不安がないわけではない。
でも、それでも大丈夫だと思えた。
後は、勇気だけだ。
「それが最大の、謂わば問題だ…」
好きと言葉にする事の
好きの意味が違うだけで
こんなにも勇気を必要とするなんて知らなかった。
『取りあえずもう直ぐ冬休みに入るし、その間じっくり考えてー…いや、ここは今年中に方を付けるべき?』
でももし万が一上手く行かなかったら1人落ち込み続けるだけの史上1最悪な冬休みになってしまうのは目に見えている。そんなの考えるだけでも怖すぎる。
せめて冬休みの間は今のままで楽しく過ごしたい気もあるが、先延ばしにして待たせすぎるのも如何なものか…
勇気もなければタイミングも難しく、うまくいくビジョンが全く見えてこない。下手に動いて玉砕する可能性があるのなら、時の流れに身を任せるのも1つの手なのかもしれない。
『睦月と居れば自然と見えてくるような…見せてくれるような、気も、するし。好きにさせるって、言ってくれたし…いや、でもそれってかなり他力本願だよな…』
待たせているのは自分なのだ。待たせてる相手に丸投げするなんて不誠実極まりないにもほどがあるし、まるで好きって言わせてみろと言っているようで…なんか嫌だ。
『やっぱ、俺がどうにかしないと…』
なにはともあれ、明日から心落ち着かない日々になりそうだ。いや、今もある意味落ち着かない日々である事には変わりないのだから、さらに、とつけるのが正しいのだけれど。
それでも側に居れることが幸せだと感じるのだから、好きと言うのはとても不思議なものだ。
「好き。……好き」
静かな部屋に落とされたその言葉は誰にも届くことなく儚く消えてき、安積は1人笑顔をこぼした。
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