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慰弦

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- 24章 -

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恐らく言いづらくて友の話と言う体で話して居たのだろうけれど、それがバレていたという事実に顔を赤らめ気まずそうに目をそらしながら、余熱で丁度良く暖まっている最後のほうとうを皿によそう姿が微笑ましい。

弟が幸せならそれで良い。

もし苦しみや悲しみが弟の身に降りかかったその時は、どうか彼が守り支えてくれる人でありますように。

ただ、1つ残念な事と言えばー


「さっきも言ったけど、せいが幸せなら相手の性別なんて関係ないし、応援もする。でもー」

「……でも、なに?」

「残念ながら同性との経験はないから、なんの助言もしてあげられないのが残念だなぁーって」

「助言って…それならもういっぱいもらっ、たー…」


『あー、もう、からかいがいがあるんだからw』

意味に気が付いて真っ赤になる姿に、なんだかんだちゃんと年相応に成長してくれてるのが嬉しくなる。


「こんな事なら、結婚する前に俺も1回くらいは」

「もう良いからっ!!そんな事気にしなくて良いからっ!!」

「えー、真剣なのにひどいっ!!」

「どっちがっ!!」

「ふははっ、あぁ、お酒がおーいしぃー! あっ、でもちゃんとお勉強してからにしなよ?怪我したり病気になったら大変だからね?」

「う゛っ……ぅん。その、うち…するっ」


『本当にもうっ、ほんっっとーにもう!!睦月といい、ひじりといいっ、どーして俺の周りは人をからかって遊ぶ人達ばかりなんだよっ!?』

いつもいつも困らせられてばかり居るのにそれでも嫌にはなれないのは、彼らがそれ以上に沢山の優しさや思いやりを与えてくれているからでー

大きな愛情感じることが出来るからだ。

でも、もう少しお手柔らかにして欲しいと思う時も無きにしもあらずなんだけれど…

『というか、待てよ?最初から知ってたって事は…』 

優しい人なのか、かっこいい人なのか、大切にしてくれそうなのか、そう尋ねて来た時には既に知っていたという事で…

『待って待ってっ!…俺、なんて答えたっけ!?』

チラリと兄を盗み見ると、なんとも涼しげで満足げな顔をしてお酒を嗜んでいる。

『ヤバい…恥ずかしぬっ…!』

楽しげに舌鼓する兄に少しばかり憎らしさを感じるけれど、他の誰でもないその兄のおかげで自分の考えがなんとなく見えてきた気がするのが事実である。

まだもう少し考えを整理する時間は必要だけれど…


「ひじり」

「なぁに?」

「ありがと。がんばる」

「うん。どーいたしまして」


暫く食後の余韻を楽しみつつまったりとした後、おおよそたらふくお酒を楽しんだとは思えない軽快な足取りで帰路に付く兄を見送り、ソファーへと寝転んだ。
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