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- 24章 -
- 普通 -
しおりを挟むそんな普通じゃない兄の普通じゃないと言える事柄の中で、母があんな行動をとるなにかがあるなんて、想像がつかない。
思わず口をついた普通じゃないと言う言葉に難しい顔をして黙り込んだ弟に、月影は密かに溜め息をついた。
弟にはまだ自分の普通じゃない能力について打ち明ける事は出来ていない。万が一にも嫌われたくない相手だからこそ自分から言うのはハードルも高く、出来ることなら言わないままで居たいと言うのが本音でもある。
『信用、してないわけではないんだけどね…』
一般的に見て自分が普通なわけがないのだ。誰も居ない所に永遠と話かけ続け、誰かと遊ぶ様に1人で遊ぶ子供に恐怖を感じないわけがない。そんな状況が長く続く中、妊娠に重い悪阻ときたら情緒不安定になってもしょうがないのだ。だからと言って彼女の事を容認できる訳ではないけれど。
「普通じゃないって事は誰かを怖がらせてしまう事だってある。その事で苦労した事も人に迷惑かけた事もあったけど、それでもそれが俺の一部である事には変わりないし変えられないものだから…上手く付き合ってくしかないんだ。けどそれに助けられた事だってあるし、わりと好きな所でもあるんだよね。だからさ、つまりは普通じゃない事が悪い事とは限らないの」
この力があったから、孤児院の家族と打ち解けることが出来た。この力があったから、長谷川と関わっていく切っ掛けができた。さらには唯一無二の親友と呼べるまでにもなった。
…怪我をさせてしまったのは申し訳なかったと今でも罪悪感はあるけれどー
『いやー…もう、あの時はお互い必死すぎて、今じゃもう逆に笑い話だよねぇ。でもまぁ、あの時は格好良かったなぁ…なんて、口が裂けても言わないけど』
話をしていく中で思い出された当時の記憶に無意識に笑みが浮かぶが、直ぐ様ハッとし表情ひ引き締めた。
今は友達の相談と言う体の弟の相談を聞く時であり、自分の話をする時ではない。それにこのまま続けていたら普通じゃない事がなんなのかまで話が及んでしまいそうで、それは出来れば避けたい所だ。
『そうなる前に話を戻さないとっ』
「さっきさ、聖は同性同士で付き合うのが普通じゃないって言ってたけど、それが駄目なことだって思ってるの?それが駄目なことだって誰が決めたの?多数派が正義で少数派は絶対悪なの?」
「それは…俺は、そうとは思わない、けど…」
煮えきらず先の続かない言葉を最後に困り顔で黙り込んだ安積は、取り皿によそわれたまま減らないほうとうへと視線を落とした。
そんな弟に少し心が痛む。
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