Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
643 / 1,151
- 24章 -

- 普通 -

しおりを挟む


『…やっちゃった。完全にフリーズしちゃってる』

養子縁組がどうのこうのなんて話は別に今しなくても良かったかもしれない。自分にとって身近な話が相手にとってもそうだとは限らないのだし…余計ややこしくしてしまった。

行動する前にデメリットを把握しておく事も大切だけれど、そればかり考えても足を止めてしまうだけだ。なせば成る、踏み出してみれば思ったよりもなんでもない事だったと言うことだってあるのだから。

ついつい、心配で喋りすぎてしまう。


「あー…ごめんね、なんか色々言って混乱させたかもしれない。まぁ、だからね。要は、 “ 大変なことも全部含めて本人達が幸せだと思うなら良いんじゃないかな ” って思うんだよね」

「…そっか。じゃぁさ、ひじりが…幸せの為に切り捨てたり我慢した事ってなに?」

「えっ、そこ?」

「うん」

「…なんでまたそんな。どうして、そんな事聞きたいの?」


色々と話した中でまさかそこを拾われるとは思わなかった…もっと、こう、乗り越える為にはどうすれば良いかとか、決断する為にはどうすれば良いかとか、家族や親しい人達はどう思うだろかとか、そう言った事を聞かれると思っていた。

『切り捨てたもの…は…』

それは弟にとって気持ちの良い話ではなく、伝えるには物凄く躊躇われる話だ。それなのにまるで狙ったかのようにピンポイントで質問してくるなんて…予想外すぎる。


ひじりの言う通り、もちろん大なり小なり我慢は必要だと思う。でも出来るなら…俺は何かを切り捨てたりなんてしたくない。それは多分、皆一緒だと思うんだ。だから…それでもひじりが切り捨てなきゃならなかったものがあったのなら、それはなんだったんだろうなぁって」

「…なにを捨てるのかは人各々だから、俺のを聞いた所でせいの参考はならないけど」

「それでも」

「でも、せいにとって良い話じゃないし」

「…良いよ、大丈夫」


『大丈夫って…簡単に言ってくれるなぁ』

答えてしまえば異母弟を傷つけるのは明白だ。けれど自分を見る真剣な目に嘘をつくのも躊躇われる。

『正直に言うべきか、黙っているべきか…』

まだ多感な10代の子供だ。どんどんと様々なものを吸収し、良くも悪くも影響されやすく、繊細で傷つきやすい。出来るかぎり悲しい事や辛い事から守ってあげたい。その為ならなんでもする。

そう思う反面、常に何もかもから守り甘やかしてばかりいても本人の為にならないのも事実だ。大人になって困難が立ち塞がった時には、それまでの経験が物を言うのだから。

それに真剣に悩んで真剣に問いかけてくる弟に、真剣に答えないのも不誠実かもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

ヤンデレでも好きだよ!

はな
BL
春山玲にはヤンデレの恋人がいる。だが、その恋人のヤンデレは自分には発動しないようで…? 他の女の子にヤンデレを発揮する恋人に玲は限界を感じていた。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

処理中です...