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- 24章 -
- 普通 -
しおりを挟む「LGBTかぁ。難しい問題だねぇ」
「LGBT?」
「セクシャルマイノリティの総称だよ。女性が女性を好きになるレズビアン、男性が男性を好きになるゲイセクシャル、恋愛対象が同性にも異性にも向くバイセクシャルに、性自認が体と違うトランスジェンダー…の頭文字繋げた言葉だよ」
「…なんか色々あるんだね」
他にもあるけれど、混乱を避ける為に今は割愛する。弟や弟を好きな人がどれに当てはまるかは分からないけれど、それがなんであれ同性を好きになる事をどう思うかと言われれば、答えは1つしかない。
「……やっぱり、引く、よね。そんなん」
「えっ、どうして?別に引かないよ?」
「………」
「そうだなぁ、俺は当人達が幸せだと思えるならそれで良いと思うけど」
「そんな簡単に…やっぱり普通じゃないじゃん。気持ち悪いとかさ、思われたりする事だってあるでしょ?」
「普通…ねぇ」
マイノリティ(少数派)という総称が使われて居るくらいなのでもしかしたら自分の気にしすぎなのかも知れないけれど、どうしてもこの場での普通という言葉は偏見や侮蔑があるように聞こえてしまって好きではない。少し回りくどくなってしまうのは承知で、なるべく“普通”と言う言葉を避けつつ話を進めた。
「性自認が一致した異性愛者が大多数だし、日本はまだ認知や理解が遅れてるから偏見の目は受けるかもしれないけど、だから本人達が幸せだと思えるかどうかが大事なんだと思うよ」
「そうかも知れないけど…そんな状況で幸せなんて思えるのかな…」
「それは人それぞれじゃないかな」
『幸せ、ね』
“聖にとっての幸せってなに?”
うっかり口から出そうになった言葉を辛うじて飲み込んだ。弟の口から発せられる言葉と、弟から感じとれるものとがごっちゃになってしまった…
弟はあくまで第3者の立場として話しているのだから、それはそうとして話を聞いてあげないと口をつぐんでしまうだろう。それは駄目だ。
「そうだなぁ。幸せになるって、全部が全部楽しかったり嬉しかったり、そう言う良い事ばっかりじゃないと思うんだよね」
「幸せなのに?」
「そう。自分の求める幸せの為に、何かを我慢したり切り捨てたりする必要もあるって事。同性同士で付き合うって事はさ、堂々と手を繋いで歩く事も出来ないかもしれないし、一生隠していかなきゃいけない事もあるかもしれない。誰にも祝福してもらえないかもしれないし、周りからのマイナスな視線に耐えていかなきゃならない。そういった事からの寂しさとか孤独、辛さもあると思う」
「…………」
「今の日本では結婚も出来ないし…勿論子供も持てないから家庭も築けない。養子縁組は出来るけどあくまで親子関係だし、もし同性婚が認められたとしても一度組んでしまったら法的にはもう結婚する事は出来なくなる。でも、血縁関係じゃないと出来ない手続きもあったりするでしょ?病院関係とかね。気持ちだけじゃどうにも出来ないの。そう言う色々な問題があっても、2人で乗り越えてずっと一緒に居たい。そう思えるなら、それが幸せなるって事なんだと思うよ」
「………」
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