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- 24章 -
- もう一つのキーホルダー -
しおりを挟む「いつかはさ、自分に起こった出来事を受け入れて、昔みたいなあの子に戻れれば良いなって思ってたけど…なんか、余計なことしちゃったな」
「本当にね。折角マシになってきたのにあんたがトラウマ思い起こさせてどうするのよ」
「ごめん…」
自分で思って自分で言った事だけど、姉にまで言われると余計に落ち込む。事故に遭ったと聞いた時、弟はきっと怖かったと思う。彼女の事を思い出して不安で心細かったと思う。文化祭に行く途中だったせいで、自分のせいだと落ち込み責めたかもしれない。
立ち直らせたいと思っているのに、悪化させてしまった。最低だ。
「…でも、あんたは生きてるでしょ」
「え?……あぁ、うん」
「事故にあった全員が全員、死ぬ訳じゃないって分かっただけでも良かったんじゃない?」
「そう、かな…」
「さぁね。でもあんたが暗い顔してたら明がまた落ち込むでしょ。止めてよめんどくさいんだから。やっと退院するんだし素直に喜んどきなさいよ」
「そっか、それもそうだね…ごめん」
「じゃ、私帰るから」
「うん、来てくれてありがと」
冷たいのか冷たくないのか分からない言葉を残しさらりと帰っていく姿にすっきりとしない気持ちが渦巻くけれど、あれが小さい頃からなに一つ変わらない姉の性格だ。
思いやりや優しさ、配慮にかけていて嫌になる時もあるけれど、それでも話しながらそれとなくキーケースにキーホルダーを付けていた所を見るとそれなりに情と言うものはあるのかもしれない。
「お待たせしまー……あれ、帰ったんですか?」
「うん、今さっき」
「そうですか。一応皆分飲み物買ってきたんですけど…飲みます?」
「やったっ!お祝い増えたぁ!」
お使いから帰ってきた班乃は先程まで居た筈の長女の姿がないことに気がつくが、特に物申すわけでもなく次女の隣に座ると飲み物を手渡した。
長女が自分かっ…….自由奔放なのは昔からなので、最早2人とも何も思わなくなっていた。
一応言っておくが、別に仲が悪いわけではない。
のどかな時間を味わうようにぼんやりと空を眺める姉弟だったが、暫くして暖を取る様に弟の両手に握られている物に気がつき、ギュッと心が締め付けられた。
「…明がそれ飲んでるの、久々に見た気がする」
「え? そう、ですか?」
お茶やコーヒー、水に時々紅茶。幼馴染みを亡くしたあの日から大人を連想させるような物を好むようになった。まるで早く大人になりたいと必要以上に生き急ぐように、様々なものを急速に変えていった。
まるで一線引くように家族や友達、誰1人例外はなく敬語で話すようになり、弱音や愚痴も言わなくなった。そのくせ異様な程他人に親切になり、他の事など入り込む暇さえない程勉学に集中し出したかと思えば偏差値レベルも鰻上りで、B~Cだった志望校は全てA判定に変わった。
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