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- 24章 -
- もう一つのキーホルダー -
しおりを挟む「なにやってんのあんたら。恋人ごっこ??」
「もーっ!直ぐそう言うこと言うっ!!」
「だから嫌われるんですよ?」
「私は嫌われてない。そんな事より荷物運び終わったから。忘れ物ないかだけ確認しておいてよね。明はどうする?帰るなら送ってくけど」
「ありがとうございます。でも母達と帰るので大丈夫です」
「そう?じゃぁ私はー」
「ねぇねぇ明っ、喉乾いちゃったからなんか飲み物買ってきてくれない??ピーチネクターが良いなっ!3階の自販機にあるからっ!」
用事を終え登場した長女の言葉を遮り唐突にお使いを言い渡す次女に、長女共々隠すことなく班乃は面倒くさい表情を全面に押し出した。大型の病院のため病棟へは地味に距離があるし、しかもその3階……
「嫌ですよ。帰りにスーパーにでも寄って買えば良いじゃないですか」
「今飲みたいのっ!退院祝いだと思ってさっ!お願いっ!!」
「安い退院祝いですね…」
「お得でしょ??おねしゃーす!!」
「…まったく、しょうがないですね。分かりましたよ。少し待っててください」
「ありがとー!」
立ち上がり服に付いた芝生を払うと、お使いに行く前に長女へとキーホルダーを差し出した。事の経緯をざっくりと説明している最中も繁々とそれを眺め、興味なさげに短くお礼を言う長女の態度にも最早慣れっこである。さして気にすることもなく班乃は退院祝いを購入するためその場を後にした。
病棟へと向かう班乃の姿が見えなくなると帰ると言った筈の長女がベンチへと腰をおろし、それに並んで次女も腰をおろした。
「ねぇ、姉さん」
「なによ」
「明があーいう喋り方になったのって、いつからだったか覚えてる?」
「桂木さんが亡くなった時でしょ」
「だよね。なんかさ、まるで思い出とか全部含めて、それまでの自分を居なかった事にしてるみたいで悲しかったんだよね。他人行儀に感じて寂しかったのもあるし。でも、それがあの子が自分を守るための手段だったのならしょうがないかなって思ったんだよね」
「打たれ弱いのよあの子は。大体中学生同士の子供の恋愛なんて大人になったら忘れるようなもんじゃない。いい加減うじうじするのは止めなさいよって思うけどね。鬱陶しい」
長女のその言い草に密かに溜め息をつく。大人になれば忘れるようなもの。確かにそういう考えも出来るかもしれないし、そう言うことだってある。
けれどいつだって本人達は、その時々を見て、感じて、考えて、1歩づつ全力で生きてるのだ。
幼くとも全力で好きになった人を亡くしたのなら、幼いが故に立ち直れず堕ちるところまで堕ちてしまうとも言えるのではないだろうか。
いくら兄妹だとしても、長女のその優しさにかける言葉に辟易してしまう。それでも本人に言うことはなく今までなんだかんだ立ち直る手助けをしてくれてたのも事実なので、なんとも言えない気持ちになる。
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