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- 24章 -
- 銀杏の葉 -
しおりを挟む「がっくんはさぁ」
「ん?」
「進路どうするの?」
「進学」
あまりの即答ぶりに一瞬言葉を失う。まだ2年の2学期末だ。…もう、かもしれないけれど。
「保育士の資格取らないといけないからな。本当は家を手伝いながら通信で取ろうと思ってたんだけど、人生この先長いから学生生活も楽しめって。母さん達が」
「なるほどー…前から実家継ぐって言ってたもんねぇ」
「お前は?」
「俺? 俺はー…んー……」
聞いてはみたものの、自分の進路についてはまだ明確には見えていない。進学か、就職かさえも。やってみたい事がないわけではないのだけど…そろそろ、ふんわりとでも決めないとまずいかもしれない。
「俺は、まだ決まってないんだよねぇ」
「……そう」
「でも、進学だろうと就職だろうと、がっくんとずーっと一緒に居るってのは決めてるからっ!」
「まずは進路決めろよ」
「冷たいっ!?」
『良いですけどねっ、別にぃっ!?これが平常運転だしっ!!ごもっともですしっ!?でもちょっとぐらい照れるとか喜ぶとかしてくれても良くないっ!?』
少しの悔しさと、少しばかりの不安が過る。はたして本当に自分達は付き合っているのか?本当に自分の事を好きで居てくれているのか?
あの時の告白の返事は、あの時くれた花は、もしかしたら自分の妄想なのではと思うほどドライだ。
鈴橋があまり感情を表に出さないのは分かってるし、分かりづらい時があるのは確かだけれど、分かる時の方が圧倒的に多いと自信を持って言える。
のだけど、やっぱり不安になる時だってあるものでー
抱き締める腕に力を込めた。
「がっくん」
「なに?」
「大好き」
表情に出ない分、不安になったその時は言葉で確めあいたい。そんな思いから出た言葉であったが、抱き締める腕を鈴橋が押し退けた。
けれど、不安になる間を与えるまでもなく唇に柔らかく暖かな感触が触れる。
「……俺も」
「あ……りがとっ!」
『表情に出ないから言葉でって……』
下手をすれば、下手をしなくても自分よりも行動派な鈴橋には必要なかったかもしれない。
「さて、そろそろ寝るか」
「そだね」
とはいえ、まるで熟年夫婦のようなさっぱり感に物足りなさがないわけではない。この先もっと関係性を深めていったら色んな表情を見る事が出来るのだろうか?
もっと色んな姿を見てみたいと思うのは自然の心理というものだろう。
「…高校卒業してもし一人暮らしとかしたらさぁ」
「うん?」
「遊びに来てくれる?」
「時間があえばな」
「お泊まりとか」
「時間があえばな」
「そしたらさぁー…」
「なに?」
「もっと色々な事、できるよねっ!」
「………」
それは自分ばかりがドキドキとさせられ、反面余裕を醸し出すかのようなドライな鈴橋に対したちょっとばかりの仕返しのつもりだった。
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