621 / 1,151
- 24章 -
- クレープ -
しおりを挟むでも、こんな事相談できる人なんて……
相談できる人なんて……
『あっ! ぃや、でも……うーん………』
思い浮かぶ人は1人だけ居るには居る。
けれど、ほぼ一緒に生活していたことはないとしても、それでも間柄的に気まずいものがある。
彼なら否定や偏見なく真剣に相談に乗ってくれるだろうし、彼がどんな話をしてくれるのかもとても気になる。自分より人生経験は豊富だし、なにかしら良い案をくれるだろう。
『でもやっぱり…』
赤の他人ではない人からこんな事を言われたら、ショックを受けさせてしまうかも…大事にしてもらってもいるし、悲しませてしまうかもしれない。それは嫌だ。
『ようやく自由に会えるようになったのに、こんな話をして悲しませるのはー…あっ!』
そうだ。なにも馬鹿正直に自分の事として話す必要はないわけで、むしろ他人の話としての方が本音の意見をくれるかもしれない。
『あれ、今日の俺冴えてる??』
あまり返事を待たせすぎるのも市ノ瀬に悪いし、なにより今の宙ぶらりんな状況に自分が耐えられそうにない。
なるべく早めに時間見つけて相談してみよう。
色々考えてる内に動悸も収まった。
取り敢えず風呂入って明日の準備して、宿題してゆっくりしよう!!
上向きに寝っ転がったまま両手を組んで天井へと大きく伸びをし、気合いをー…
気合いを……
視界に入った自身の手に、帰り際の出来事が一瞬にして頭の中を駆け巡る。
市ノ瀬の不適な笑みと、手の甲にかかる暖かな息、そして言葉を紡ぐ毎に触れる柔らかなあの感触が。
『っっ!!』
視界から逃がすようにバッと両手を抱え込んで丸まった。収まった筈の心臓がまた煩く音を立てている。
『せっかく落ち着いたのにっ!!なんなんだよもうっ!!』
誰かを想うというのは、こんなにも終日落ち着かなくなるものなのだろうか?世の皆様はこんな大変なことに耐え続けて居るのだろうか?
『すげぇな…』
余裕なんて全然顔を出してくれる気がしない…
溜め息をついて、無意識に手の甲を見つめた。
そして、その手に
頬擦りをー………
「しねぇよっっっ!?」
すんでの所で自身の行動に気がつき勢い良く起き上がると、誰が聞いてるわけでもないのに声を大にして言い訳を口にした。
もう、これはまずい。
結果を出すことでこれが収まるのかは分からないけど、このままだと自分が持たない。
市ノ瀬の猛攻撃に耐えられる気がしない。
『早く話を聞いて貰わないとっ!』
その勢いのまま相談相手にLINEを飛ばし約束を取り付けると、着替えをひっつかみ風呂へと直行した。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説


ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる