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- 24章 -
- クレープ -
しおりを挟む「………あのさっ!」
「んだよ?」
『ちょっと機嫌悪いな……』
自分のせいだろうからしょうがないのだけど…それでも振り向いてくれた事を確認した安積は、負けじと人差し指を立てた両手を限界まで広げた。
「こっからここまで、いや、までって言うか、こっちはずーーっと長く続いてるんだけど、兎に角長ーい線があるとして…」
「……おぅ」
「で、この線は、途中で分かれてくの。厳密に言うとたくさんなんだけど、取り敢えず今は3つ」
「はぁ」
「分かれてからも、どんどん枝分かれしてくんだけど…今、3つのうちのこれで、この辺なんだよね」
「なにが?」
「秘密」
「はぁ??」
「睦月」
「なに?」
「覚えてなかったわけじゃないよ。色々してくれんの、凄く嬉しい。なのに、可愛げなくてごめん。頑張るから」
「……なんか、色々意味分からないんだが」
「良いの、それで。ほらっ、早く帰ろ。寒いし!」
足を早め市ノ瀬の前へ進み出ると後ろを振り返る。腑に落ちない顔をしているが、今はちょっと説明しずらく曖昧に笑って誤魔化した。
安積にとって誰かに何かをするのは苦ではない。誰かの役に立てるなら、それで誰かが救われるのなら、それが自分の喜びにもなる。だから、困ってる人が居るなら力になりたい。
そうやって生きてきた。
もしかしたら、だからこそなのかもしれない。誰かの好意に全力で甘えることが出来ない。それが相手を悲しませる時もあることは理解出来ないわけではないのに。
だからー
「実は俺、ホッカイロ持ってんだよねっ!」
「ふーん?」
意を決してあげた声に、だからなに?とでも言いたげに首を傾ける市ノ瀬へカイロを持つ手を差し出した。
「でも1個しかなくて…」
「はぁ」
「だからさ…その…」
「なんだよ?」
『頑張れ俺っ!』
「寒いって言ってたし……だから、そのー」
「…………」
「一緒に、暖まって帰る?」
「……………は?」
差し出されたカイロの乗った手をじっくりと眺めようやくでた市ノ瀬の言葉には困惑が色濃く乗っかっていた。
「それってー」
「やっ、やっぱりなんでもないっ!!」
悲しませることも理解できる。だから、ちょっとだけ甘えてみようかなんて思って…寒いのも本当だけど、それは口実みたいなもので、ほんのちょっとだけ、手、繋ぎたいなって思って…
『ないっ!ないわっ!!しかも外でっ!なに言ってんの俺!?ちょードン引きされてんじゃん!!あーもう無理っ!!時間巻き戻してぇっ!死ぬっ!』
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