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- 24章 -
- クレープ -
しおりを挟むベルが鳴り立ち上がる安積を片手で制止すると、クレープを受け取りに向かう市ノ瀬の後ろ姿を見送る。
転校当初はこんなにも仲良くなれるなんて思ってはなかった。むしろ正直に言えば、最初は嫌いだったくらいだ。
けれど友達なんて面倒なものはいらないと言ったその寂しい理由にそれだけじゃないって知って欲しくて、自分も相手も幸せにしたいから自分の我が儘に付き合ってもらうなんて大それた事を言っておきながら、いつの間にか市ノ瀬から貰う物の方が多くなっていた。
友達になれたと思う。
友達を好きになってくれたとも思う。
でも、それ以上の好きを、自分に向けてくれている。
ここまでは想像してなかったし
頭の片隅にもなかった。
そして、それが嫌だと感じないなんて
自分自身に驚いている。
恋人と友達の違いは??
そう聞かれれば、完璧に答えることは出来なくても、なにも分からない程子供ではない。
恋人の好きと友達の好きの違いがなんなのかも、少なくても自分の中の定義はあるつもりだ。
市ノ瀬に対しての好きは、今どの辺りにあるのだろう。
「なに難しい顔してんだよ」
「クレープっっ!!」
「無視かよ」
「ありがとっ!!」
『それよりも!
今は!
クレープっ!!』
両手に受け取ったクレープをまじまじと眺める。他の人のを見て分かっては居たけど、値段のわりにはかなりのボリュームだ。
糖度の高さがありありと分かる輝きと甘い香りを放つ苺に、それを優しく包み込むようなきめ細かい生クリーム、そして1番上に主張激しく乗っかった苺のアイス…
もう一方は、イチゴアイスより見た目は地味だけれど、ラズベリーとブルーベリーが使われている為かフレッシュな香りとリキュールのような甘い香りが絶妙に絡み合い、大いに食欲をそそっている。
念のため言っておくが飲酒をしたことはない。月影が安積宅に遊びに来てはあまりにも美味しそうに飲むものだから、安積の中でもその香りに“美味しそう”という印象がついてしまっているだけだ。
「どうしよ睦月!両方旨そう!!どっちから食べよう!?」
「どう考えてもアイスだろ…溶けるし」
「それもそうだっ!!いただきまっ」
す、まで言い終わる前に口いっぱいに頬張る姿からは幸せのオーラが漂っている。途端に口に手を当てこれでもかと眉を下げた安積から歓喜の声が漏れだした。
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