Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
611 / 1,142
- 24章 -

- クレープ -

しおりを挟む


「ねぇ!これ旨そうじゃねっ!?」

「ん? あー、良いな。うまそう」

「でもこっちも気になるなぁー…睦月はなにするか決めた??」

「あー、俺?」


班乃と別れた後、例のクレープ店まで来た2人は長い列に並びつつHPでメニューをチェックしていた。最初こそ緊張を感じさせる面持ちをしつつあまりの女性客の多さに戸惑っていた安積だったが、今は面影もないくらいに生き生きとしてメニュー選びに熱心になっている。

良い意味でも周りを気にしない市ノ瀬にとっては女性客の多さなど気にも止めることではなかったし、むしろ最早安積以外は眼中にもない。


「俺はチョコバナナ一択」

「即答っ!?そんなチョコバナナ好きなん?」

「好きだけど、凄い好きというか、初めて来た店ではまずチョコバナナって決めてんだよ」

「なにそれっw  なんで?」

「チョコバナナ旨い店は大抵全部旨い」

「なんだそれっ!!でもなんとなく分かる気がする!!」


今まで考えもしなかったことだけれど、そう言われればそう思えてくるから不思議だ。しかしだからといって、こんなにも目移りする程のメニューがあるのに同じチョコバナナを頼むのは勿体ない気がしてしまってー…


『…悩みすぎじゃね?』


列も2/3ほど進んだというのに隣でいまだ熱心にメニューとにらめっこしながら決めかねている安積からは順番が来てもまだ悩んでる未来しか見えない。

『ほんと、なにするにも一生懸命なやつだ…』

もちろん、そこも好きの1つなんだけど。

しかし決められないまま順番がきてしまい時間に迫られ取りあえずで決めたもので後悔でもしたら可哀想だ。自業自得と言えばそうなのだけれど、そうならないように手助け出来るのならする以外の選択肢はない。


「決まったか?」

「うーん……4つまで絞ったとこ!!」

「どれ?」

「アイス系だと、イチゴアイスとハニーアイスで迷ってて、クリーム系だと、チョコバナナとイチゴチョコ…あっ、でもベリーベリーってのも気になるな!! あー、でもカスタード系も美味しそうなんだよなぁー。あっ、これも旨そう!!スイートポテトだって!!」


『………4つとは?』

どうやら絞った先から興味そそる物が目に入ってしまい、食べたいものがドンドンとっ散らかってしまっているようだ。興味津々すぎるのも大変そうだなぁーとどこか他人事のように眺める市ノ瀬だったが、注文の列は待ってくれない。安積の要望を耳に入れつつ今一度メニューへと目を落とすと、丁度良さそうなのを見つけ指差した。


「…イチゴチョコバナナってのもあるぞ?イチゴチョコとチョコバナナで迷ってんならこれで良くね?」

「えっ!?どこどこ!?ホントだ!?頭良いっ!!」

「……そりゃどーも。取りあえずアイスかクリーム系で絞れば?変わり種は置いといてさ。それは次来た時頼めば良いだろ」

「……次?」

「来ねぇの?」

「来るっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...