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慰弦

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- 23章 -

- 終幕 -

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すかさず渡し直されたのは、先程間違えたと渡された物の色違いのものだった。なぜキーホルダー??こんなもの手にしたのは小学生の修学旅行以来かもしれない。当時は剣とか龍とかあしらわれたのがやけに人気だったのを覚えている。


「なにこれ」

「文化祭でさ、綾と睦月に置いてかれた後にあっきーと作りに行ったんだっ!!」

「あぁ、お前がトイレ行ったまま消えた時の…」

「いや、俺から言わせれば消えたのはお前達だからねっ!?」


直ぐに班乃と合流出来たし良い経験も出来たから結果良ければだったけれど、トイレから出た時の寂しさと言ったらなかった…

『まぁ、今更どうでも良いけどもっ!!』


「そんで、折角作るならお揃いで持ちたいなって思ってさ!渡すの遅くなってごめんだけど、あっきーが青で俺が黄色、睦月が紫な!!」


安積の言葉に合わせるように、いつの間にかケースに取り付けたストラップを班乃が持ち上げ、安積もそれに続くように自身のケースへ取り付けていく。

しかしー


「俺、ケースにストラップホールついてねぇよ?」

「Σ なんでよぅ!?」

「なんでって言われても……」

「そーですか。残念ですね。それなら睦月だけ別のところに」

「そろそろ買い換えようと思ってたし、買うわ、付けられるケース」

「まじっ!?ナイスタイミングっ!!」

「……………」

「うるせぇよ」

「なにも言ってませんけどね」


『目が物語ってんだよ目がっ!!』

そうですよ、買い換えようなんて微塵も思ってませんでしたよ。それが何か?安積が悲しむなら、喜ぶならこれくらいしますよ。当たり前じゃないですか。

それにーー


「レジンとか使ったの初めてだか、あんま上手じゃないけど…」

「いや、全然。サンキュー。大事にするわ」


手の中のキーホルダーをまじまじと眺めた市ノ瀬は大事そうに握りしめた。確かにあまり上手とは言えないけれど、自分の為にと作られたそれが嬉しくないわけがない。

市ノ瀬の礼にはにかんだ笑顔を浮かた安積は、なにも言わず踵を返すと再び駅へと歩きだした。


「…良い笑顔してますね。凄く嬉しそうです」

「そーだな」

「貴方のおかげですね。ありがとうございます」

「別に、俺だけが何かしたからってわけじゃねぇだろ。約束、守ってくれてサンキューな。感謝してるよ」

「いえ…僕が約束を守れるのは睦月が居てくれるからですから。僕こそありがとうございます」

「なんで俺だよ?」

「ご想像にお任せします」

「なんだそれw」


避けるのを止めて欲しい。その約束が守られて居ることは、今日の生き生きとした様子を見れば一目瞭然だった。それが何故自分が居るからになるのかは分からないが、結果守られるのなら大した問題ではない。
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