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- 23章 -
- 終幕 -
しおりを挟む『もー止めてくれ!兎に角この場を離れさせてくれ!!』
なおも可笑しそうに笑いながら話す2人に背を向け、早足でその場から足を進めた。道中女子高生等に “ カッコよかったです! ” と声をかけられ反射的に睨み返すが、何故か照れたように悲鳴を上げ去っていった。
『意味わからんっ!!』
自分の知らない思い出話に少しだけ寂しく思ったりもしたけど、こんなこっぱずかしい思い出なんてー
「睦月っ!!」
「んだよっ!!」
暫く歩き先程の一連を見ていたであろう人々が居なくなった辺りで名前を呼ばれ、怒りのまま振り返ろうとするが背後から突撃してきた安積に阻止される。
仕方なく首だけで振り返ると、安積の両手が腹へと回され力一杯抱き締められたかと思うと良い笑顔が放たれた。
「…お前ら、こんな所でよく練習なんてー」
「やべぇ楽しいっ!!楽しいなぁっ!睦月っ!」
「そう、それは良かったな…」
練習なんてしてたなという文句は、元気に笑う安積によって発せられることなく消えていく。
この公園での安積の…いや、安積と班乃の思い出の中に自分も加われたのは素直に嬉しい事ではあった。その内容事態は…ちょっと、あれだけれど…
それでも、安積がこんなに楽しそうにしてるなら、それすらも問題はない気がしてくるから不思議だ。
「あっ、今はケバブやってるんですね」
「えっ!?いい匂いすると思ったらそーゆぅ!?」
「へぇー、キッチンカー来るのか、この公園。今日はケバブにしとくか?」
「えっ!? うーん……いや、今日はクレープ!!ケバブはまた3人で食いに来ようよ!」
「良いですね、楽しみにしてます」
そんな雑談を繰り広げながら並んで歩くイチョウ並木は丁度見頃のようで、色鮮やかな葉がヒラヒラと舞い落ちながら壮観な絨毯を作っている。
前を歩く安積の頭に何枚か乗っかっているが、これはこれで可愛らしいので暫くは眺めて楽しもう、と思っていたのだが、突然何かを思い出したように声を上げた安積が勢いよく振り返り、その反動で無情にも滑り落ちた。
『『…勿体ない。』』
「ねぇねぇ、あっきーっ!!持ってるっ!?キーホルダー!!」
「えっ? キーホルダー…
あっ、あぁ、持ってますよ、ちゃんと」
キーホルダーって?と思いはしたが、普段キーホルダーなど付けない班乃だからこそ、直ぐにその存在を思い出した。色々とあって付けるタイミングを失っていたけれど、それでも鞄の中にはいつも入れてあった。
「ねぇ、携帯ケース、ストラップホール付いてる?」
「どうでしょう?…あ、付いてるみたいです」
「俺も付いてる!! 睦月っ!!」
「あ?」
元気良く名前を呼ぶと、ポケットから何かを取り出し市ノ瀬へと差し出した。手を出し返すと、そこに転がっていたのはー
「なにこれ、キーホルダー?」
「あっ、間違えた!睦月のはこっち!」
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