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- 23章 -
- 終幕 -
しおりを挟む「やべぇー!ちょー懐かしー!!」
「そうですねっ、一緒に居たくないから早く帰ってって言われましたのも懐かしいです」
「あーっ、言ったわっ!言ってたわ俺っ!!wってか意外と台詞覚えてるもんだな!スゲー!!」
「たくさん練習しましたもんね」
自分の知らない頃の話で盛り上がっている2人の会話に入り込めず、市ノ瀬はボンヤリとその一連を眺めるしか出来ない。2人に自分の知らない思い出があるのは当たり前だししょうがない事でもあるのだけれど、やはり少し寂しく感じー
そうになるが、突如楽しそうに笑っていた2人のタイミングを合わせたかのような視線を一身に受け、思わず1歩後ろに下がった。
…なにやら2人して少し悪い顔をしている気がする
「え、なに?」
戸惑う市ノ瀬を無視し何かを企むような表情で目の前まで進んできた安積が、今度は少し切ない顔を作りー…
「安心してくださいな。この声は、ヒバリではなくナイチンゲール。まだ夜明けではありません。心配ないわ。安心してください」
ロミオとジュリエットの台詞を読み上げた。急な事に戸惑うが、それ以前にそれはロミオに対する台詞であり、この場合は自分ではなく班乃へと向けるべきだろう。
「いや、俺本来マキューシオだし、言うなら明にー」
「安心してくださいな」
「いや、だからー」
「安心してくださいな」
『駄目だこれ。多分、台詞返さないとそれ以外喋らないやつだ…』
しかし先程の班乃と安積の寸劇に多少の目が集まってしまっており、それとなく此方を見ている数人の視線を感じる。
しかし、この状況を打破するには台詞を読み上げるしかないだろう。安積の後で堪えるように笑っている班乃が少し苛立たしい…。
半ば自棄糞で大きく息を吸い込むと安積の手を取った。
「いいえ、ジュリエットっ。こっ…これはヒバリの声だっ…!夜の灯火は燃え尽き、朝の使いが私たちの別れを告げに来たのです。私を守る月夜の衣は、光輝く太陽の前に消え失せてしまいました」
『くさい!台詞がくっさい!!本番中ならまだしも公園でなんて…恥ずかしくて死ねるっ!』
もう満足だろ!?と手を離そうとするが、片方を安積が力強く掴んだまま離さず、そしてもう片方をー
班乃が握った。
「あ゛ぁ?」
「いいえ…いいえ。あれは太陽の光なんかじゃないわ。そうじゃない。まだ大丈夫。まだ大丈夫よ。まだ行かないで…私の側に居て……」
「なんで明がジュリエッ…」
「私の側に居て…」
『お前もかよっ!?ってかなんでジュリエット2人なんだよっ!?』
顔をひきつらせながら、なんとか次の台詞を絞り出した。
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