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- 23章 -
- 青の終焉 -
しおりを挟む差し出された小指に小指を絡め “約束です” と返すと、どこか悲しみを湛えた笑顔でそっと離した。
「じゃ、これからも宜しくっ!」
その言葉と同時にぽんぽんっと班乃の肩を叩くが、その表情には不安げな色が微かに残っている。そんな彼に笑顔で頷くと、嬉しそうに笑い、もう一度肩を叩いたかと思うと軽やかに背を向た。
少し離れた所で待っていた市ノ瀬と合流し、楽しそうに談笑しながら教室へと向かう2人の後ろ姿を眺める。
班乃が安積を引き留めた時直ぐこちらに気がついた市ノ瀬だったが、なにも言わず離れて待っていてくれたその優しさに、醸し出される余裕な様子に感謝と悔しさとが鬩ぎ合う。
これからもきっと、こんな感情と付き合っていかなければならないのだろう。
けれど、こればかりは、時間が解決してくれるのを待つしかないのかもしれない。
前を歩く安積が着いて来ていない班乃に気がつき満面の笑みで大きく手招きをした。その隣では、市ノ瀬が珍しく穏やかな笑顔で自分を見ている。
「ー…僕の大切な親友だと言ったあの時、貴方がホッとした顔したの、ほんとは結構凹んだんですよ」
誰ともなく呟いてから、笑顔を返して歩みを進める。
自分の1番大切な人の、1番の幸せを願うと決めた。
今は、そうしたいと心から思う。
でもー
1つだけ心残りがある。
それはもう、叶うことも
叶えるつもりもないけれど
ただ1つだけ。
「好きだって、1度も言えなかったな…」
そんな呟きは、言えなかった言葉と共に、喧騒の中に淡く溶けて消えていった。
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