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- 23章 -
- 青の終焉 -
しおりを挟む『しかし…あれだけ隠したがっていたのに、まさか自分から打ち明けるなんて…』
がっくん達実は宇宙人だったのっ!?
分裂とか高等技術じゃんっ!?
と訳の分からない発言を懸命に語る安積をしみじみと眺める。その様子は自分に話した時とは違い、なんだか肩の荷が降りたようにも思えた。
たぶん、打ち明けたのもそれを重荷と感じていなさそうなのも、きっと全部市ノ瀬の影響なのだろう。そう思うと少し悔しく、嫉妬や妬みを感じると同時に安心して安積を任せられるといった安堵感も沸いてくるのが複雑な所だ。
「でもこれでちゃんと協力できるし、教えてくれてありがと、せーちゃん!」
「今まで大丈夫だったんだし何もする事はないと思うけど…まぁ、なにかあったら薬吸わせるくらいなら出来るから。無理はするなよ」
思いもよらぬ反応と予想外に優しい(特に鈴橋の)そんな言葉に熱くなった目を両手で顔を覆い隠した安積は、何かに耐えるように思い切り踞ったかと思うと感極まった表情で市ノ瀬を見上げた。
「………~っ、ねぇ睦月ぃぃーー!! 2人が優しいぃーーありがとぉぉーーー!」
「なぜ俺に言う?」
礼はあっちに言え、とでも言うように顎で2人を指した市ノ瀬は呆れたように顔を背ける。
『ま、でも良い感じじゃん』
素直に鈴橋等に感謝をのべる安積から顔を背けた市ノ瀬の顔には、どこか嬉しそうな色が浮かんでいた。
自分1人でどうにかしようとするのではなく、こうして少しずつでも誰かを頼る事を覚えて行ってくれるのは良い傾向だと思う。
「あっきーと睦月にはたまたまバレちゃったんだけどさ、自分から誰かに言うのは初めてだから緊張したっ!綾もがっくんも、話聞いてくれてありがとうっ!」
「どういたしましてっ!!」
「………」
「…成る程。睦月もたまたま知ったんですね」
「お前、意外と良い性格してるよな」
「ありがとうございます」
「誉めてねぇよ?」
微かに刺のある班乃の発言に、誰かさんのおかげでな、と出かけた言葉を寸でで飲み込んだ。流石にそんな傷口に塩を塗り込んだ上から更に塗り込むような真似は出来ない。
それに、好きな気持ちをすぐに忘れるなど出来ることではないだろうし、2人は親友以上の間柄だったように思える。班乃の気持ちを考えたら、暫く多少の刺は甘んじて受けるしかないだろう。
やけに感激している安積の後ろから漂うそんな絶妙な空気に、なんとなく事情を知ってしまってる植野は冷や汗と共に苦笑するしかないのだが、種を撒いている張本人である安積はまったく気がついていないようで…平和なことはなりよりだ…
「ホントにホントにありがとう2人ともっ!!今まで黙っててごめん!迷惑かけちゃうこともあるかもだけどよろしくっ!」
2人の手を取って目を潤ませ大袈裟な程に喜ぶ安積に笑顔を返す植野だったが、相も変わず仏頂面した鈴橋はその手を振り払った。
『まったく、不器用なんだから』
そんな不器用さもがっくんの魅力ではあるー
横目で恋人を盗み見ながらほのぼのとしていた植野だったが、不意に飛んできた言葉にそれは一瞬にして崩れ去った。
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