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慰弦

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- 23章 -

- 青の終焉 -

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「えーと…取りあえず、がっくん達誘ってみよっか」

「まぁ、学は来なさそうだけど、声はかけても良いかもな」


それにしても、あそこまで勢いよく断るなんて…しかも安積の誘いを。クレープに親でも殺されたんだろうかという勢いだ…


「あっきー、こーゆーのそんなに嫌いだったっけ?」

「さぁ、そんなイメージねぇけど」

「だよねぇー」


もう一度顔を見合せ首をかしげる。しかしこれ以上考えたところで答えはでなさそうだ。もうそろそろHRも始まるしと会話を打ちきり前を向く安積だったが、直ぐにもう一度、半分だけ市ノ瀬へと顔を向けた。


「どーした?」

「がっくん達も誘うから」

「おー」

「……今回は」

「……おう」


それだけ言うと、再び前へ向き直った。

本当に、なんなのだろうかこの可愛い生き物は…

不意打ちにからかう事も出来ず、机に突っ伏し声にならない声をあげる。すると、直ぐにLINEの通知オンが鳴り、のろのろと携帯を手に取る。

そこには、開かずとも通知欄で読みきることの出来る短文が送られてきていた。


“でもデートじゃないからっ!”  

『はいはい、分かってますよ』

いつかデートだと言わせてやる。
…いや、もしかしたら照れて一生言ってくれないかもしれないけれど。
それでもこうして意識してくれているということは、進展への吉兆と捉えても良さそうだ。

丁度担任が教室に姿を現し立ち上がっていた生徒達が急いで席に座り始める中、あまりからかっても逆効果になりそうで、“りょー”とだけ返信し、HRへと意識を戻した。


そしてそんな朝のやり取りで生まれた疑問は、意外と早く解決することになる。

昼休み、生徒会の仕事で少し遅れて合流する事になった班乃だったが、声をかけた途端向けられた視線に嫌な予感がして足を止めた。


「あっきー!!」

「……なんです?」


名前を呼びながら元気に手招きするその姿が、今はなんだか少し怖い。だがいつまでも突っ立ってるわけにも行かず、招かれるままに合流し腰を下ろした。


「綾から聞いたよ!? あのクレープ屋行ったことあるんだって!?なんで教えてくれないのよー!」

「………綾雪?」


笑顔で植野を見るその目が、余計なこと言ってないでしょうね?と語っているのがよく分かる。

『圧っ!!圧怖いよあっきーっ!?』

冷汗を浮かべ控えめな降参ポーズで顔を横に降ると、ため息と共にその圧から解放されほっと胸を撫で下ろした。


「えーと、実はそうなんです。一度綾雪にんですけど、僕個人的にはあまり合わなかったので…楽しみにしてる安積達に悪いなぁと」


嘘は言ってない、嘘は。
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