586 / 1,142
- 23章 -
-真誠-
しおりを挟むそれを最後に口を閉ざし、重苦しい静寂が2人を包み込む。自分には何もないんだと、願うことしか出来ないのだと言ったその背中に、どんな言葉をかければいいのだろう?
かける言葉じゃない。
かけたい言葉がある。
それは哀れみや同情じゃない。
助言し応援してくれていた班乃のおかげで、自分は今幸せを手に入れることができているのだから。
出来る限り頭の中を整理し、上手く伝えることが出来るだろうかという不安と共に口を開いた。
「感謝、してると思う」
「……なにが、ですか?」
「俺は幸せを願ってくれてる人が居るって、凄くありがたい事だと思ってる。だからその人だって、そう思ってくれる明が居ることに感謝してると思う」
「どうでしょう。酷い事、してしまいましたから…」
「明が言うような人なら、きっとそうだと思うよ」
安積が班乃を嫌うだなんて到底考えつかなかった。逆に班乃を落ち込ませた事に落ち込んでしまっていても不思議ではないと思う。そういう子だ。
「それに幸せにする方法は1つじゃない。家族には家族にしか、恋人には恋人にしか、親友には親友にしか出来ない、幸せにする方法があると思う。諦めたからって、その人に出来ることがなくなるなんて事はないよ」
たとえ安積が班乃の想いを受け入れられなかったとしても、嫌いになる事はないはずだ。今まで親友として過ごしてきた時間の中で、培ってきた物が沢山あるはずだからー
「俺はその人にも明は必要なんだって思う。だから、明は明として、その人にとっての明の立ち位置から幸せにしてあげれば良い。出来ることは、まだまだ沢山あるよ」
「でも、側に居ることでまた傷つけてしまうこともあるかもしれません」
「近づかないでとでも言われたの?」
「言われては、居ないですけど…」
「なら大丈夫。明なら大丈夫だよ、絶対」
「絶対……」
文末だけを繰り返し発した班乃が、植野を見やった。
その気配に植野も班乃へと目を向ける。
自分に向けられたその目は…
『えっ……なにそのめちゃくちゃ険しい目!?』
物凄く座った、全てを否定し疑うような目だった。
自分なりに結構上手く伝えられたんじゃないかと思ったのだけに困惑が酷く強い……
「えっと……」
「根拠は?」
「こ ん き ょ っ !?」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる