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- 23章 -
-真誠-
しおりを挟む「………きょり?…距離って、どぅ、して?」
突如言われたその言葉に理解できないと言う感情を押し出したような戸惑いの言葉を漏らし、不安げに下げられる眉に罪悪感がのし掛かる。
「貴方を嫌っているわけじゃないです。ずっとそうしてくれと言うわけでもありません。少しの間だけで良いんです。…協力、していただけませんか?」
諦める。
そう決めたけれど
自分自身が信用に値しない人間なんだと
自分自身が1番よく知っている。
またふとした拍子に傷つけてしまうかもしれない。
もう、同じ事は繰り返したくない。
安積を想う気持ちを割りきれるようになるまでは。
「…理由、聞いても良い?」
絞り出すように発した言葉には絶望の色が見える。
でもこれがお互いの為だ。
「すいません。理由は言えません。でも、行動を別にしたいと言うわけじゃないんです。今まで通りに、登下校やお昼、部活、その他でも居れる時は一緒に居たいとは思ってます。ただー…」
『どうしよう、うまく言えない……』
「…スキンシップが多くて親しみやすい。それは安積の良い所ですし勿論好感も持っています。でも……その、少し控えてほしいんです」
「………触んないでってこと?」
「…そう、ですね。先程も言いましたけど貴方が嫌いだからとか、そう言うのではないんです。絶対。だから誤解はしないで欲しいんですが…」
「……………」
「傷つけるような事言ってしまってすいません。でも、その…僕が、甘えそうになってしまうんです。それは、したくなくて」
「……分かった。あっきーが、そうしたいなら、気をつける」
「ありがとうございます」
安積から体を離すと静かに立ち上がる。
悲しそうに俯きこちらを見ようとしない安積に胸が締め付けられ今すぐにでも前言撤回したくなるが、そういう訳にはいかない。
傷つけたと思う。
触るなと言われたら、誰だって傷つく。
でも駄目だ。
ここで撤回したらもっと傷つけてしまうかもしれないのだから。意思を強くと頭を振って甘えた考えを吹き飛ばした。
「では、僕は今からでも授業にー」
「ねぇっ、あっきー…?」
「なんですか?」
保健室を出ようと背を向けかけた班乃を安積が呼び止める。小さく声を発しては飲み込みを繰り返し、言うべき言葉を懸命に探している様だ。
そして漸くでた言葉はー
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