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- 23章 -
- 創始 -
しおりを挟む「知らないからなっ」
「ん?」
「今お前が言ったこと全部、言わなきゃ良かったって後悔しても、知らないからっ!」
「しねぇよ、絶対」
あぁ、もう駄目だ。
駄目だ、もう。
こんなの、もう絶対に手離せるわけがない。
この温もりを、求めずには居られない。
こんなにも大切に思ってくれている人が居ることが
こんなにも大事にしてくれているそのことが
凄く凄く嬉しくて。
1人では何も出来なくなってしまうかもと言う不安も、もしその不安通りになってしまったとしても
市ノ瀬なら
そんなもの全部吹き飛ばして、側に居続けてくれる。
そう、思える。
「ありがと、睦月」
「どういたしまして。キスして良いか?」
「流れぶったぎんな!?駄目に決まってんだろ!?台無しだよ色々っ!!」
「なんだ…意外と流されてくれないんだな」
『なんだそれっ!空気読めよっ!?』
断られたのにも関わらず、目の前では市ノ瀬が楽しそうに笑っている。それだけでもう自分も嬉しくなってしまう。
そう思える相手とずっと一緒に居る事が本当に本当に出来るのなら、それは凄く幸せなことなんじゃないか?
市ノ瀬と居る時が1番自分らしく居られると思う。
そしてそんな自分が好きだったりする。
これは好きと言うことなんだろうか?
今はまだ分からないけれど、その答えはきっと一緒に過ごしていく内に自然と見つけられる。
きっと市ノ瀬が教えてくれる。
焦らず、ゆっくりと、それで良いと思える。
観覧車を降り、イルミネーションの中を並んで歩く。閉園時間よりまだ早い時間。昼間とは違う静かな賑わいを感じながら、その中に溶け込む様に進んでいく。
少し前を歩く市ノ瀬を見上げると、直ぐに気がつき視線を返してくれた。なんでもないと首を横に振ると、静かに笑って前を向く。
もっと一緒に居たい。
今、市ノ瀬はなにを考えてるんだろう?
自分と一緒だったら嬉しい。
だが、まだ子供であるがゆえに、そろそろ帰らなければ。
「楽しかったな」
「そうだな」
帰ろうとは言いたくなかった。だけれど、帰ろうという意思を、楽しかったと過去形にすることで伝えてみる。その言葉に自然と出口へと向かい始める歩みが少し寂しい。
でも、そうだなと返してくれた一言、たったそれだけで、同じ気持ちを返してくれるそれだけで、幸せを感じられるこの空気が、出来るならこの先もずっと続いてほしい。
そんな願いと名残惜しさを感じつつ、様々なものをもたらしてくれた遊園地を並んで後にした。
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