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- 23章 -
- 創始 -
しおりを挟む暫しの思考の後、みるみると変わっていく安積の表情から意味が伝わったのは分かったけれどー
『困ったな。
そんなつもりじゃなかった』
いや、困まるだろう事は分かっていたけれど、困らせる為に言ったわけではない。ここで思考停止されたらこっちが困る。
早々と次の話に移らなければー…
「別に困らせる為に言ったんじゃない。お前が俺にそう言う気持ちがない事は分かってるし、今すぐ返事をくれとも思ってない。いずれはお前も俺を好きになれとは思うけど、それは今じゃなくて、これから俺がそうさせる所だから、今はどーでも良い」
「えっ…良いのかよっ」
ほぼ反射的に、最後の部分にだけ突っ込みを入れた安積だったがー
再び困惑した表情を浮かべ、えっと、そのーと小さく口にしながら言うべき言葉を探しているようだ。
『忙しいやつだな……』
まぁ、そうさせているのは自分なのだけど。
こんな時でもコロコロと変わる豊かな表情が魅力的だと思ってしまうからもう重症だ。
『いや、自分まで思考を飛ばしてどうする。そんなに時間もないんだ。しっかりしろ』
と甘い気持ちを押し込め心の中で渇を入れ直した。
「要するに、俺がお前に対してそう言う気持ちを持ってるってのを念頭に置いて聞いてほしい事があるって事なんだが」
「…………うん?」
『絶対頭パンクしてんな…大丈夫かこれ??』
ちゃんと伝われ、という願いを込めつつ、ようやく本題へと入る。
「俺はお前が好きだ。でも、他人を大事にしすぎて自分を犠牲にする所は嫌いだ。他人を優先して自分を後回しにする所が嫌いだ。いつだって人の事ばかりで自分を蔑ろにする所が嫌いだ。お前は自分さえ我慢すれば全部上手く行くって思ってるかもしれないけど、お前を大事にしたい俺の気持ちはどうなる?」
「そ……んなこと、言われても」
「分かってる。そんなこと言われても、お前は変わらないだろうって事くらい。それがお前だし、お前の良い所でもあるんだから」
「じゃぁ…他にどーすれば良いんだよ…」
「簡単な話だ。辛いなら辛いって言え。悲しいなら悲しいって、苦しいなら苦しいって言え。困ってるなら助けてって言え。自分一人で全部背負おうとすんな。少しは俺にも背負わせろ」
話を進めれば進める程、どんどん落ちて俯いていくそこには、一体どんな表情が浮かんでいるのだろうか?困惑か、反発や苛立ちか、悲しみか、喜びか、全然分からないけれど、泣いては居ないでほしい。
泣かせたいわけじゃない。
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