547 / 1,142
- 22章 -
- 不調和 -
しおりを挟む「なんだったんだろう?」
「えぇっ!?」
前半は班乃と安積の異変について、後半は全く関係ない話だったように思える。2人の異変についてはただ変だよなってだけで別の話題に変わってしまったので、結局なにも解決しないままだった事に今気が付いた。
「会長と安積の様子が変だってのと、あとはまた別のところでも悩んでるみたいだったな」
「別の話題って?」
市ノ瀬との会話を全て説明すると、何故か植野の顔に複雑な色が浮かび上がる。
「どうした?」
「いや、なんでもないよ」
そんな自分の変化に不思議そうに問いかけてくる鈴橋に笑顔で答え、そろそろ寝ようかと電気を消した。
鈴橋は気が付いてないみたいだけれど、もしかしたら、という考えが頭に浮かんだ。別の話題と言いきったそれは別の話題なんなじゃなく、演劇部3人を取り巻く話なのだとしたらー……
そのタイミングでわざわざ別の話題を持ち出すというのも考えづらいし。
『これはかなり複雑なんじゃないだろうか…』
1人なにが出来るかと頭を抱えながら、なにも考え付かないままその日は眠りについた。
同じ頃、自宅へ着つくと夕飯と宿題を済ませいつもよりゆっくりと湯船に浸かった市ノ瀬は倒れこむように布団へと潜り込んだ。
頭の中では鈴橋との会話が繰り返し思い出されていく。
目から鱗だった。
言われてみれば確かにそうだ。何をどうしても気まずくなるのならば、何も分からない状況のまま何もせず停滞しているよりも行動してみるべきなのかもしれない。
それとー……
気まずくならないように、普通に接することが出来るよう努力すれば良いと言う言葉は、自分の考えの浅さを感じさせる言葉だった。
2人のいつも通りに振る舞う姿に苛立っていたが、それは気まずくならないよう周りを気遣う2人の努力だったのだと漸く気が付いた。
そしてそれは、自分に対する壁ではなかったと言うことも。一体今まで2人の何を見てきたんだろうか?転校早々、酷いこともした、酷いことも言った、そんな自分を受け入れてくれたのは他でもない2人だった筈だ。
傷ついていないからじゃない、傷つけた事をなんとも思ってないわけじゃない、辛くなかったわけでもない、各々が複雑な感情を抱えたまま、それでも周りに対する配慮を忘れない、そんな優しさからだったんだと。
頭に血が上りすぎていたのかもしれない。
もっと冷静に、視野を広げていかないと。
明日からの身の振り方など、止まることなく考え働き続けようとする頭を、目を閉じ無理矢理休ませた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる