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- 22章 -
- 不調和 -
しおりを挟む「……大丈夫?」
「…………駄目、かもしれません」
「駄目ってww 水持ってくるからちょっと待ってて!」
別に辛い物が苦手と言うわけではないし、そもそも辛い物だと分かってもいた。が、頼んだチリトマトクレープの強烈な辛さと来たら…。植野の差し出した水を口に含むが飲み込むことも出来そうはない。飲み込んだらまた強烈な痛みが襲いそうで。
「なに、笑ってるんですか?」
一言喋る度に水を再び含むを繰り返しながら、何とか会話をしていく。
「いや、明でもこう言うことあるんだなって」
「人の不幸は蜜の味ですか?性格悪いですよ綾雪」
「そんなんじゃないって!珍しい1面見れてちょっと嬉しいの」
「僕は嬉しくありません」
「あっ、クリームちょっと食べる?緩和されると思うよ?」
差し出された植野のクレープを涙目で見詰め暫し悩んだ末、無言のまま付属されていたスプーンでクリームを剥ぎ取り口へ運ぶ。甘さが口内に広がると共に、確かに少しばかり辛さが抑えられた気がした。
「やっぱり帰れば良かった……」
「俺は来れて良かったよ!」
愉快そうに笑う植野を恨めしげに睨むが、睨んだ所でクレープが消えて失くなるわけではない。食べ物を残すのはモラルとしても許せるものではないしと、結局もう一度悪魔のような列に並び(植野が)、注文した生クリームのみのクレープと共に完食した。
「って事があったんだよね!」
「そう」
班乃と分かれた後鈴橋家で夕飯をご馳走になり、そのままご好意で泊めてもらう事になった植野は2つ並べたシングル布団に3人で寝そべっていた。鈴橋と植野の間には既に紗千が気持ち良さそうな寝息を立てている。
妹の胸元にあやすようにぽんぽんと置かれる手が優しくて好きだ。すやすやと眠る妹につられるように落ちかける目が、そんな穏やかな光景が好きだ。
なんて、そんな事を考えながら、今日あったことを報告していた。
「クレープ食べて帰りましたって…なにしに行ったんだよ」
「クレープ食べに!」
「はぁ………」
市ノ瀬と分かれた後届いたLINEに班乃と帰ると書かれていたのでなにか話をしたのかと思いきや、普通にクレープを食べて当たり障りない会話をしてそのまま帰ってきたらしい。
「もっと有意義な時間の使い方しろよ」
「十分有意義だよw 明ってどっちかって言うと誰かに相談するタイプじゃなくて、自分で考えて考えて解決するタイプじゃない?なんかそれがしんどそうだったからさ、少し息抜きの手伝い出来れば良いなって思って」
「まぁ、確かに、そうかもだけど」
植野ほど班乃と個人的な付き合いのない鈴橋にはそうと言われればそうかもとしか言いようがない。別に嫌いと言うわけではないのだけれど、“なんでもそつなくこなす”、そんなイメージのある班乃に一種の近寄りづらさがあるのは確かで、其れ故の付き合いの薄さだった。
「それで、むっちゃんはどうだったの?」
「あぁ。それは………」
「がっくん?」
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