Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
543 / 1,142
- 22章 -

- 不調和 -

しおりを挟む


「なぁ、学」

「なんだよ」

「もしもさ」

「……」

「自分の好きな奴が親友と付き合ってるかもってなったらどうする?」

「…なにその昼ドラ展開」


なんだか急に話題が反れた上問いかけられた昼ドラあるあるな展開に思わず突っ込む鈴橋だったが、余計な話でグダグダ会話が引き伸びるのは面倒だと一先ず聞かれた通り考えてみる。

『浮気だなんだは置いといてー』

植野が親友、とは違うが取りあえず市ノ瀬と付き合ってるとする。


「………ビビるな」

「や、そーじゃなくて。ってか居んのか好きな奴」

「もしもだろ?」

「あー、そうだな」


急に自身に関する話題に触れられ内心焦りつつも極力平常心を保って返答する。今はまだ植野との事を誰にも言うつもりはない。

上手く誤魔化せただろうかとチラリと盗み見た市ノ瀬は全く気にした様子はなく小さく安堵の息を吐いた。


「後はまぁ、悲しいとか悔しいとか。色々あるんじゃないか?」

「そう、だな……お前だったら、聞く?」

「聞く…付き合ってるかどうかってことか?」

「そう」

「聞くだろ」

「Σ聞くのかよ!?」


『即答すぎてこっちがビビるっ。ないのか、こー、関係にヒビが入るかも、とかそー言うの!?』

なんで?という顔をして居るのがなんだか憎らしい。


「お前は付き合ってるかもって言う可能性で身を引くのか?それはまた静粛な神経をお持ちで」

「あるだろ色々と。気まずくなるとかっ」

「誰が?」

「俺も好きな奴も親友もっ、皆だよっ」

「皆?…皆、気まずくなる、ねぇ…」


それを最後に口を閉ざし、初めて目の当たりにした問題に直面したような難しい表情で腕を組んだ。

『大丈夫かこいつ……?』

気まずくなるかも、関係が壊れてしまうかもと言うことは、こういう局面では誰しも考えそうなごく自然な感情だと思うのだけど…

しかしだからこそ、そう言うことを考えない鈴橋が一体どういう答えを導き出すのかは興味が沸く所である。もしかしたらこのドンズマリした今を打開するような奇抜な意見が飛び出すかも知れないとある種の希望を抱き、大人しく鈴橋の言葉を待った。


「そんなの、自分次第じゃないか?」 

「なにが?」

「お前は今その2人と普通に接することが出来てるのか?」

「…わかんねぇ」

「出来てないなら、聞いて気まずくなるのと大差ないじゃないか」

「それはー…そうかも、しれないけど…」

「聞いても聞かなくても気まずくなるなら、聞いて気まずくなる方が良いだろ。付き合ってないなら良かったと思えば良いし、付き合ってるなら、諦めるなり伝えるだけ伝えてみたり好きにすれば良い。どうなっても気まずくなる結果は変わらないんだから、その後普通に接する事が出来るように自分が努力すれば良いだけの話だろ」

「でも、もし俺とそいつが付き合ったとしたら、そいつを好きな親友だって気まずいだろ?」

「そんなの知ったかとか。好きは否定できないだろ。そん時はそいつが頑張れば良いだけの話だし、そいつとも交友していきたいならお前らが努力すれば良いだけだ」

「………」

「なんだよ?」

「いや、意外と押し強タイプなんだなと…」

「…そんなつもりはないけど」


そうなのだとしたら、それを植野相手に出来てれば我慢させ続けることはなかったのかもしれない…少し落ち込みそうになる鈴橋だったが、今は順風満帆だし結果良ければ、だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...